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「うつ病自殺は公務が原因」 東京地裁、新人教師の死を「公務災害」と認定
亡くなった女性教諭の父親

「うつ病自殺は公務が原因」 東京地裁、新人教師の死を「公務災害」と認定

東京都西東京市の市立小学校に配属された新人の女性教諭(当時25)が10年前、うつ病にかかり、自殺した。その死が、教師としての仕事に起因する「公務災害」として認められなかったのは不当だとして、遺族が地方公務員災害補償基金を相手取って、処分の取り消しを求めていた訴訟の判決が2月29日、東京地裁であった。吉田徹裁判長は「自殺は公務が原因だった」と認定し、同基金に処分の取り消しを命じる判決を下した。

判決などによると、女性教諭は2006年4月、西東京市の市立小学校に新任教員として配属された。直後から、担任をつとめる学級で、児童による万引き事件や、児童の上履きや体操服が隠されるトラブルが相次いだ。さらに、保護者からのクレームなどがあり、精神的な負担が重なった。

こうした状況に加え、初任研修の課題などによるプレッシャーがあり、さらに自宅へ持ち帰る作業など時間外勤務が増えた。女性教諭は同年6月にうつ病を発症。同年9月にいったん職場復帰したが、その後も学級トラブルが相次いだという。そんななか、女性教諭は同年10月に自殺を図り、意識不明のまま12月に亡くなった。

●「女性教諭に相当程度、強い精神的負荷がかかっていた」

遺族は2008年2月、うつ病発症と自殺は公務が原因だとして、地方公務員災害補償基金に対して、公務災害として認定することを求めたが、「公務外の災害」と認定する処分を受けた。これを不服として、公務災害補償基金審査会に再審査を請求したが棄却されため、2013年に提訴していた。

吉田裁判長は「女性教諭に相当程度、強い精神的負荷がかかっていた」などと判断。そのうえで、女性教諭のうつ病発症と自殺は、公務が原因だったとして、遺族側の主張を認める判決を言い渡した。

判決後、女性教諭の父親(67)は、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。父親は「さっそく、娘に報告したい」「この9年間は長い長い期間で、とても苦しかった」「控訴しないでほしい」とコメント。さらに「教育関係者には、次世代を担う子どもたちの育成の場に、決して過労死問題を持ち込まないでいただきたい」と話していた。

地方公務員労働災害補償基金は弁護士ドットコムニュースの取材に「判決の内容を精査して今後の対応を決めたい」と答えた。

(弁護士ドットコムニュース)

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