大東文化大学で、2012年度の卒業アルバムがいまだに申し込んだ学生に届けられていない問題。大学によると、卒業アルバムの制作は例年、学生自治会「卒業アルバム委員会」のメンバーが写真撮影とレイアウト作業を担当し、そのデータを委託業者が引き継いで完成させるという流れになっていた。
ところが、学生が写真データの貼り付けやレイアウト作業を途中で放棄して、2013年3月に卒業してしまったことから作業が頓挫。いまだにアルバムは未納のままだという。アルバムは1冊1万2千円。卒業生2796人のうち410人が、委託業者にお金を振り込む形でアルバム購入を申し込んでおり、委託業者は総額492万円を受け取っているそうだ。
大学は4月18日、弁護士ドットコムの取材に対し、「アルバムはようやく完成したが、発送先住所の確認などもあり、いつ届けられるかは未定」と話した。ただ、卒業後すでに1年が経過している。なかには「もういらない」という人もいるだろう。そんな購入申込者は、支払ったお金を返してもらうことができるのだろうか。近藤公人弁護士に聞いた。
●「請負契約」が成立していると考えられる
「振込用紙にどのような記載がされているかが不明ですが、通常、振込用紙には『〇〇年度卒業アルバム代』などと記載されているでしょう。
そうであれば、申込者が振り込みをした時点で、申込者と卒業アルバム業者との間に、卒業アルバム作成の『請負契約』が成立していると考えられます。請負契約が結ばれれば、業者にはアルバムを完成させ、申込者に送る義務(債務)が発生します。
そして申込者は、アルバムが届けられるまで、いつでも契約を解除できます。ただし、その場合は、業者に生じた損害を賠償する必要があります」
このように近藤弁護士は述べる。この場合の「損害賠償」というのは、アルバム業者の仕事の進み具合により、業者側に製作費などの『損害』が発生していれば、それを賠償しなければならないということだ。
●契約を「解除」することはできる
アルバムを申し込んだ学生にしてみれば、自分には何の落ち度もないのに、なぜ損害賠償をしなければいけないのかと疑問に思うのではないか。今回は、そのような賠償などしないで、全額を返金してもらえるようなケースではないだろうか。
「仮に業者が、正当な理由がないのに、義務(債務)を履行しない状態にあるなら、それは『債務不履行』となります。
債務不履行の典型は、履行できるのに期限が過ぎてもそれをしない『履行遅滞』や、履行が不可能になった『履行不能』などです。
債務不履行になれば、申込者は業者に『契約解除の通知』をして、代金をそのまま返還してもらうことも可能です」
このように近藤弁護士は話していた。