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就活生の7割「地域限定正社員」を希望…約束破りの「転勤命令」が出たら拒否できる?
画像はイメージです(ふじよ / PIXTA)

就活生の7割「地域限定正社員」を希望…約束破りの「転勤命令」が出たら拒否できる?

就活生の7割は「地域限定正社員」を希望ーー。労働政策研究・研修機構が就活サイトに登録している大学生・大学院生5601人にアンケートをとったところ、このような結果がわかり、人気ぶりを浮き彫りにしました。

地域限定社員とは、一定の地域内での配属・異動を条件に契約する正社員のことです。就職活動を経験している大学生・大学院生には、「住居の変更を伴う転勤がない」という点が魅力的にうつるようです。

今回のアンケートでも、地域限定正社員について、「ぜひ応募したい」と回答した人が24.5%、「一般正社員と処遇の大きな差がなければ応募したい」が48.1%で、合わせると7割を超えました。

ただ、この「限定地域外への転勤がない」という条件は、どこまで守られるのでしょうか。

例えば、入社後、会社から「事情が変わったので域外へ転勤して」と命じられた場合、断ることはできるのでしょうか。また、地域拠点の閉鎖などで、その地域で働けなくなった場合、すぐに解雇されてしまうのでしょうか。森田梨沙弁護士に聞きました。

●一方的な転勤の命令を原則として拒否できる

「これまで我が国では、長期的雇用を予定した正社員については、会社は、従業員の能力向上や労働力調整のため、広範囲な配転を命じる権限を有しているというのが通例でした。

しかし、昨今の『多様な正社員』制度の実現というニーズの高まりから、転勤するエリアが限定されていたり、転居を伴う転勤がなかったり、あるいは転勤が一切ない正社員、いわゆる地域限定正社員制度を導入する会社が徐々に増えてきています」

地域限定正社員については、どのような労働契約になっているのでしょうか。

「労働契約締結の際、労働契約書等で、勤務地が限定されていることが明示されます。この場合、原則として、会社は、当該従業員の同意なく限定された地域外への配転を命じることは出来ません(労働契約法第8条)。ですから、会社の事情で一方的に配転命令を出されたような場合には、従業員は、原則としてこれを拒否することが出来ます」

●地域拠点が閉鎖されても解雇が直ちに有効になるわけではない

では、地域拠点の閉鎖などの事情で、その地域で働けなくなった場合、地域限定正社員は直ちに解雇されてしまうのでしょうか。

「そのような場合でも、会社は、可能な限り他地域への配転を打診するなどして、解雇回避努力をすべきであり、そういった努力なしに直ちに有効な解雇をなしうるものではない、というのが多くの裁判例の考え方です。

よって、地域限定正社員についても、地域拠点の閉鎖により限定地域での勤務が出来なくなったからといって、それだけで直ちに解雇されてしまうというわけではありません」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

森田 梨沙
森田 梨沙(もりた りさ)弁護士 共進総合法律事務所
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はキックボクシング。

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