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解雇宣告なのに「自己都合退職にして下さい」と会社が要求…どんなデメリットがある?
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解雇宣告なのに「自己都合退職にして下さい」と会社が要求…どんなデメリットがある?

新卒で契約社員として会社に入社したものの、入社3か月後に「1か月後解雇する予定なので自己都合退職をお願いします」と社長に言われてしまったーー。そんな体験談がインターネット上のQ&Aサイトに投稿されています。

質問者は「会社都合退職になると思うので解雇通告書を出して下さい」と頼んだものの、会社側から、「それは勘弁してくれ」と言われてしまったそうです。

自己都合退職の場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。解雇であれば、会社都合の退職にできないのでしょうか。田村優介弁護士に聞きました。

●「解雇」と「自己都合退職」は全く異なる

「『解雇』と『自己都合退職』は全く異なります。『解雇』とは、企業が一方的に従業員の地位を失わせることで、従業員の同意などは要件となりません。

これに対して『自己都合退職』とは、従業員から、会社に対して退職したいとの意思表示をし、会社と従業員で退職することに合意することです。

『解雇』は、先ほど説明したとおり、従業員の同意なく一方的に行われるものですから、法律上厳しく規制されており、『客観的に合理的な理由』がない限り違法無効となります(労働契約法16条)。

解雇にはこのような厳しい規制があり容易に行えないため、一部の企業では、『このままではあなたは解雇になる』などと社員を脅して退職届を出させようとすることがあります(実際には法的に有効な解雇はおよそできないであろう場合にもなされます)」

●「自己都合退職」にしてしまった場合のデメリット

それでは、会社からの要求に応じる必要はないのでしょうか。

「はい、企業からの『退職届を出してほしい』という要求に応じる理由は一切ありません。退職届を出してしまうと、自分から退職の意思を示したのだという証拠になってしまうので、退職をしたくないのにこのようなことを求められた場合には、すぐに弁護士などに相談すべきです。

また、『自己都合退職』の場合は、失業給付の支給開始が3か月後になるなどの不利益が生じることがあります。退職すること自体は応じる、という場合にも、『退職勧奨』等の会社都合退職にすることができないか検討すべきです。

企業から、その場ですぐに退職届を記入、提出するよう求められたとしても、『少し考えさせてください』『家族に相談する』などとしてその場で決断することは避けるべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

田村 優介
田村 優介(たむら ゆうすけ)弁護士 城北法律事務所
ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団。残業代請求、不当解雇、パワハラなど、労働問題を多く手がける。共著「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」など。

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