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職場のプレッシャーで疲弊、自殺した郵便局員遺族と日本郵便の和解成立
亡くなった男性の妻

職場のプレッシャーで疲弊、自殺した郵便局員遺族と日本郵便の和解成立

さいたま新都心郵便局の男性職員が2010年、業務中に会社4階の窓から飛び降り自殺したのは、業務による過大なストレスが原因だったとして、遺族が日本郵便に損害賠償など約8000万円を求めていた裁判は10月12日、さいたま地裁で和解が成立した。原告側は「事実上、会社の責任を認めさせた」と語っている。

訴状などによると、男性は23年間、別の郵便局に勤務し、2006年からさいたま新都心郵便局に異動した。この郵便局は、「郵政版トヨタ方式」という業務合理化策のモデル局に指定されており、郵便物の仕分け作業にかかる時間をストップウォッチで計測するなど、作業のスピードアップを求めてきた。

また、ミスをした局員を「お立ち台」と呼ばれる台に上げ、数百人いる職員の前で叱責するなどの慣習もあったそうだ。このほか、午前8時に出勤してから2時間で配りきらないといけない時間制限付きの配達や営業ノルマも課しており、年賀ハガキなどを買い取る「自爆営業」もあったという。

男性は職場の雰囲気にプレッシャーを感じ、異動した2006年から毎年、異動願を出していた。しかし、亡くなるまでにうつ状態で3回、病気休暇を取っているにもかかわらず、異動は認められなかった。

●「すべての会社が職員の健康を考えるきっかけに」

遺族は、会社が異動などの対策を取らなかったのは安全配慮義務違反にあたるなどとして、2013年にさいたま地裁に提訴。対する日本郵便は自爆営業やお立ち台などの事実関係を否定し争っていた。

今回結ばれた和解条項で、日本郵便は男性の自殺と職場環境の因果関係には直接言及しなかった。しかし、異動で郵便局を変わってから、精神疾患になったことや、異動の希望がかなわなかったこと、男性が自殺したことについて「遺憾の意を表する」と記している。金額は非公表だが、解決金も支払われる。

和解成立後、埼玉県庁記者クラブで記者会見が開かれ、亡くなった男性の妻が、「日本郵便だけではなく、すべての会社が職員の健康を考えるきっかけになってほしい」と話した。

日本郵便は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、書面で「和解したことは事実ですが、コメントは控えさせていただきます。元社員が亡くなられたことは非常に残念で、亡くなられた元社員・ご遺族には謹んでお悔やみ申し上げます」と回答した。

(弁護士ドットコムニュース)

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