大手広告代理店「電通」の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が自殺したのは、長時間労働による過労が原因だったとして労災認定された。そんな中、高橋さん本人のものとされるツイッターのアカウントが突然、非公開とされて、「一体誰が?」と憶測を呼んでいる。
高橋さんは2015年12月に亡くなる数カ月前から、ツイッターなどで「はたらきたくない」「1日の睡眠時間2時間はレベル高すぎる」などと悲痛な投稿をしていた。今年10月7日の報道後にネット上で高橋さんのツイッターの投稿内容が話題になったが、その後、非公開となり、現在は見えなくなっている。
ツイッター社が「非公開」に変更したか、他の誰かが本人に代わってログインしたと考えられる。一般論として、本人の死後に他人がログインして設定変更した場合、法的に問題はないのだろうか。インターネット問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
●「ツイッターの利用契約の関係」が相続される
「SNSのアカウントに他人が勝手にログインしたり、設定を変更することは、原則として許されないことは当然といえます」
清水弁護士はこのように述べる。アカウントの持ち主が死亡した後については、どう考えればいいのか。
「ツイッターと利用者との間にどんな関係があるのか確認してみましょう。ツイッターを利用するためには、利用規約に同意することが必要ですが、これはツイッターとの契約です。
ツイッターの利用規約を確認したところ、ユーザーの死亡は契約の終了事由とはなっていません。そして、契約関係は原則として相続の対象となります。
したがって、ツイッターとの利用契約の関係は相続人に相続されることになります。そのため、相続人として、遺族が本人に代わってログインをしたり、設定変更したりすることは可能といえると思います」
相続人が複数いる場合などは、どう考えればいいのか。
「正式には遺産分割等が必要とも考えられますが、ツイッターのアカウントに財産的価値があるといえるかは疑問があり、これを処分(削除)したとしても、実質的に咎められることはなかろうと考えます。
また、非公開に変更するだけであれば、保存行為といえるためこれも問題とはいえないと考えます。
ちなみに、ツイッターにおいては、死亡した方のアカウント削除は、『権限のある遺産管理人または故人の家族のリクエスト』により行うことが可能です(https://support.twitter.com/forms/privacy)。
このような問題は、『デジタル終活』とか『SNS終活』などと呼ばれる問題で、最近しばしば問題として取り上げられるようになっています。
方法としては、最後にアプリなどを起動してから一定期間が経過すれば、指定のファイル等を自動的に削除してくれるサービスを利用するということが考えられますが、これではアカウントの削除まではできません。
SNSのアカウントについては、事前にアカウントを削除する、生前に弁護士と死後事務委任契約を締結しておくといった方法が考えられます。
しかしそもそも、自死に至る前に誰かに相談して、このような出来事が起きることがないようにできることが一番だと思います」