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長時間労働でうつ発症し「会社で自殺」 社員の遺族が賠償請求されたら、どうなる?
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長時間労働でうつ発症し「会社で自殺」 社員の遺族が賠償請求されたら、どうなる?

「同僚が会社内で自殺しました」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、そんな相談が寄せられた。相談者によると、自殺した同僚は、長時間の労働でうつ病と診断されていたという。パワハラなどは受けていなかったそうだ。

自殺した時期が繁忙期だったため、会社は大混乱。しかも、自殺した場所が会社の中で、そこは賃貸で借りている場所だったため、「資産価値の低下を理由にオーナーから会社に損害賠償請求がされそう」なのだという。そこで、上司は「遺族に繁忙期の自殺による売上の減少」と、「会社がオーナーに支払う損害賠償」の2点で、遺族に損害賠償を請求する可能性があると言っているそうだ。

もしも、このような理由で、遺族が会社から損害賠償を請求された場合、支払う義務はあるのだろうか。波多野進弁護士に聞いた。

●過労による自殺なら「会社に責任がある」

「同僚が、長時間労働などの過重業務によってうつ病に罹患し、そのうつ病の症状である『死にたい。死ぬ以外にこの苦しみから救われる手だてがない』等という思い(希死念慮)にかられて自死したのであれば、原則として、会社に不法行為責任や安全配慮義務違反が認められるのが通常です。

この場合、自死に追い込んだのは会社です。つまり、自死の責任は、会社にあります」

波多野弁護士はこのように述べる。会社から損害賠償を請求されたら、遺族に支払う義務はあるのだろうか?

「社員が自殺した結果、建物のオーナーから損害賠償請求を受けたり、売上げが減少したとしても、自殺の原因が長時間労働等の過重業務によって引き起こされたうつ病である以上、それは会社の自己責任と言うべきです。会社が遺族に損害賠償の請求を行うことはできないと考えます。

むしろ、自殺した理由が『長時間労働ゆえのうつ病』だった場合は、逆に遺族が会社に対し、自死によって生じた損害(逸失利益や慰謝料など)を請求できることとなります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

波多野 進
波多野 進(はたの すすむ)弁護士 同心法律事務所
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。

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