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グループ脱退で事務所に訴えられた元アイドル勝訴 労働者性が認められ、違約金は無効
記者会見にのぞむ新澤典将さん(2023年4月24日/弁護士ドットコムニュース編集部)

グループ脱退で事務所に訴えられた元アイドル勝訴 労働者性が認められ、違約金は無効

専属マネジメント契約上の義務に違反したとして、芸能事務所がアイドルグループのメンバーだった男性を相手取り、未払い報酬を差し引いた違約金989万円をもとめて提訴し、逆に男性が未払い報酬11万円の支払いもとめて反訴した裁判。

大阪地裁(長谷川利明裁判官)は、事務所側の請求を棄却した一方で、男性側の主張を認めて11万円の支払いを命じた。判決は4月21日付。男性側が4月24日、都内で記者会見を開いて明らかにした。

男性側の代理人は「アイドルの労働者性を認めて、労働基準法を適用した画期的な判決だ」と評価している。

●脱退したら違約金の支払いをもとめられた

脱退をめぐる違約金で訴えられたのは、アイドルグループ「BREAK THROUGH」(ブレイクスルー)のメンバーだった新澤典将さん。

判決などによると、新澤さんは2019年1月、芸能事務所と専属マネジメント契約を結んだうえで、ブレイクスルーのメンバーとして活動をはじめたが、同年12月に適応障害と診断された。その後に話し合いなどを経て、2020年8月にブレイクスルーを脱退した。

事務所は同年11月、契約の違約金条項にもとづいて、リハーサルやコンサート、イベントの無断欠席、脱退に関する違約金・計1000万円から未払い報酬11万円を差し引いた989万円の支払いをもとめる訴訟を起こし、逆に新澤さんは2021年3月に反訴していた。

●大阪地裁は「違約金条項は無効」と判断した

争点となったのは、契約の違約金条項が有効かどうか。新澤さん側は、労働基準法の労働者にあたるため、「違約金」「賠償金」の支払いをあらかじめ予定することを禁止した同法16条に契約が反しており、違約金条項は無効であると主張した。

大阪地裁は、新澤さんについて「事務所の指揮監督の下、時間的場所的拘束を受けつつ業務内容について許諾の自由のないまま、定められた業務を提供しており、その労務に対する対象として給与の支払を受けており、事業者性も弱く、事務所への専従性の程度も強く、労働者性が認められる」として、違約金条項は無効と判断した。

●新澤さん「泣き寝入りする必要はない」

この判決を受けて、新澤さんと代理人は4月24日、都内で記者会見を開いた。芸能界から離れて、新しい道を歩んでいる新澤さんは「素直にうれしい」と喜びの言葉を口にしつつ、労働問題に悩む人たちに向けて次のようなエールを送った。

「今の日本の労働環境や芸能界、もちろんすべてが闇ではないが、不当なことは世の中に溢れてるし、かつての僕と同じように死にたいと思っている方々もいるかもしれないけど、今回僕の口から、泣き寝入りする必要はないことと、大丈夫だよ、仲間がいるよって伝えたいです」

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