三菱電機で今年8月に起きた20代の男性新入社員の自殺をめぐり、当時の教育主任だった30代の男性社員が自殺教唆の疑いで神戸地検に書類送検された(11月14日付け)。起訴されるかどうかが今後検討される。
朝日新聞(12月7日)によれば、自殺した公園には、教育主任から「死ね」と言われたことなどを記したメモが残されていたという。社内調査では、複数の同僚社員から教育主任が厳しい口調で男性に接していたという証言も出ているそうだ。
労働問題にくわしい大久保修一弁護士は、「職場でのトラブルが刑事事件に発展し、送検されることはままあるが、パワハラが自殺教唆の疑いで送検されたことは珍しいと思う」と話す。
今後の刑事手続の中で、指導の実態や教育主任の責任の有無などがより詳細に判断されていくことになる。
●パワハラ防止法が成立したばかりなのに…
三菱電機では2014年以降、報道されているだけでも自殺者2人を含む5人が労災認定されている。
大久保弁護士は、不適切な指導があったとすれば、教育主任個人の責任だけでなく、三菱電機の社会的責任も問われるべきだと指摘する。
「今年5月末にパワハラ防止法が成立した。報道によれば、7月頃から教育主任による本格的な指導が行われ、直後の8月に今回の事件が発生してしまった。
パワハラの弊害や予防策について、今までにもまして社会的関心が高まっているなかで起こった事件ということになる。『(パワハラを)知らなかった、気がつかなかった』は会社の対応として許されるものではない。
実態を明らかにするとともに、二度と同様の事態が起こらないよう、会社は早期に具体的な改善策を示し、それを実行していく必要があるだろう」