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健常者のマッサージ資格コース訴訟、視覚障害者が危機感「認められると、生活が圧迫される」
東京・霞が関の司法記者クラブで会見した大胡田(おおごだ)誠弁護士(右から3人目)と視覚障害者の団体関係者ら(2019年9月5日、弁護士ドットコムニュース撮影)

健常者のマッサージ資格コース訴訟、視覚障害者が危機感「認められると、生活が圧迫される」

全国に大学や専門学校を展開する学校法人「平成医療学園」が、視覚障害者以外の人でもマッサージの国家資格を取れるコースの新設を申請したが、国が視聴覚障害者の職域優先を守るための法律を理由に認可せず、訴訟となっている。

平成医療学園は仙台、東京、大阪の3つの地裁で、認可しないのは憲法22条にある職業選択の自由に違反するなどとして国を訴え、東京地裁の訴訟が9月5日、結審となった。判決は12月16日に下される。

訴訟の争点となっているのは、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法」(通称「あはき法」)の19条だ。この法律では、視覚障害者の生計に配慮するため、視覚障害者以外のための養成学校などを国は承認しなくてもよいと定めている。平成医療学園側は、この法律が違憲であるとして争っている。

一方、視覚障害者の関係団体は、この裁判で国が敗訴した場合、視覚者障害者の生活への影響は大きいとして、国を支援する立場から9月5日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を行なった。

●「国が敗訴すれば、視覚障害者の生活を圧迫」

この日、会見したのは、日本理療科教員連盟や日本あん摩マッサージ指圧師協会、日本盲人会連合関東ブロック協議会、全日本鍼灸マッサージ師会の関係者ら。視覚障害者にとっては、職業選択の自由は実質的に保障されているとはいえない現状を訴えた。このまま国側が敗訴した場合、視覚障害者の生活を圧迫する可能性があるという。日本あん摩マッサージ指圧師会の安田和正会長は、「裁判に国が破れた場合を考えると、大変、危険を感じます。今回の裁判は負けることができません」と訴えた。

江戸時代から、視覚障害者は鍼灸マッサージを職業に、経済的な自立をはかってきたが、戦後、視覚障害を持たないあんま指圧師が急増。このため、政府は昭和39(1964)年、視覚障害者の経済的自立を守る目的で「あはき法」19条を制定したという歴史があるという。

会見に列席した大胡田(おおごだ)誠弁護士によると、争点の一つに「あはき法」19条には「当分の間(中略)承認をしないことができる」と書かれていることがある。平成医療学園側は、すでに制定から50年以上を経ているため、保護する必要はないと指摘している。しかし、「当分の間とは、視覚障害者はあん摩マッサージな依存しなくても生計が立てられるような社会が実現するまでであり、現状としてはまだ終わっていないと理解できます」と説明する。

その裏付けとして、国側は多くの視覚障害者がハローワークを経て就職するが、あん摩マッサージ指圧師として働く人は7割以上であること。また、あん摩マッサージ指圧師の中でも、視覚障害を持たない人と視覚障害を持つ人の間では、年収で3倍以上の大きな格差があることからも、19条の必要性を主張しているという。

大胡田弁護士は「19条の存在意義は残っています。すべての視覚障害者にとって大きな問題ですので、ぜひ関心を寄せていただきたいです」と語った。

【あはき法】

第19条 当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マツサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マツサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。

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