コンビニ大手・ファミリーマートのフランチャイズ(FC)加盟店で働いていた男性従業員が死亡したのは、長時間労働によるものだとして、遺族が同社と店主に損害賠償を求めていた裁判が大阪地裁で和解した。連帯して4300万円を支払うことになった。
報道によると、この男性は、2011年から大阪府大東市の店舗で勤務。2012年からは別の店舗でも勤務した。同年12月に、脚立から転落して頭の骨を折り、急性硬膜下血腫で翌月に死亡した。遺族は不注意ではなく、過労による転落だとして提訴していた。死亡前の半年間の残業時間は、月218〜254時間にのぼると主張していた。裁判では、同社の使用者責任を問うていた。
この裁判は、和解に至ったが、コンビニのフランチャイズ本部が解決金の支払いに応じるのは異例のケースだという。フランチャイズ本部と、加盟店舗の従業員の関係をどう考えればいいのか。コンビニFC問題にくわしい中野和子弁護士に聞いた。
●「コンビニ本部が、加盟店従業員の実質的な使用者だと考えられた」
「これまで、コンビニ加盟店従業員は、『コンビニ本部とは直接契約関係がない。だから労働契約法第5条の適用もなく本部は過労死したコンビニ従業員に何ら責任を負わない』と考えられてきました」
中野弁護士はこのように指摘する。なぜ、今回のケースではこうした考え方と異なる結論がでたのか。
「コンビニ・フランチャイズ契約は、加盟者と本部との間で結ばれる役務提供契約(特定のサービスを提供する契約類型)に類似した性質があります。
そして、加盟店の従業員は、加盟者に雇われている形ですが、コンビニ本部がその業務内容を細かく決めているほか、コンピューターで従業員の賃金も時間も直接管理しています。
従業員の賃金は、コンビニのビジネスモデルの中からしか捻出できないので、そのビジネスモデルを遂行させているコンビニ本部が実質的に従業員の賃金も労働時間も支配しているといえます。
この強い支配性からすると、コンビニ本部がコンビニ加盟店従業員の『共同使用者』あるいは『実質的使用者』だと考えられ、コンビニ従業員に対しても信義則上安全配慮義務が発生するといえます。
特別な社会的接触関係に入った当事者間では、その付随義務として信義則上安全配慮義務を負う場合があることが判例で認められています」
さらに中野弁護士は、法的責任について異なる根拠もありうると指摘する。
「加盟者とコンビニ本部による共同不法行為のほうが、より認められやすいともいえます。
コンビニ本部は、フランチャイズ契約上、加盟者に法令遵守を義務として課しています。また、複数店経営させるにあたり、従業員が超長時間労働をしていることは実際にスーパーバイザーが訪店して知っていたでしょう。そのため、加盟者に対して指導することができたはずだからです。
この問題の根源は、これまでのコンビニ・ビジネスモデルが、指定された店舗業務量をこなすために加盟者に残るロイヤリティ支払後の営業利益では必要な人員を雇う給与を賄いきれないところにあります。
実際には、フランチャイズ契約という名称の労働契約が、コンビニ本部と加盟者との間、コンビニ本部と加盟店従業員との間にともに存在していると考えるべきです」