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過労で体調を崩す従業員の「助け舟」になるか…健康管理の鍵を握る「産業医」の役割

長時間労働やパワハラで心身の調子を崩す人も多い中、従業員の健康管理の役割を担っているのが「産業医」という存在です。休職や復職の際に、面談を受けたこともある人もいるでしょう。産業医とはどのような位置付けなのでしょうか。

 ●従業員50人以上の職場に選任が義務付けられている

労働問題に詳しい波多野進弁護士は「産業医とは、事業場において、労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導や助言を行う医師のことです。労働安全衛生法により、常時50名以上の従業員のいる事業場は産業医の選任することが義務づけられています。

産業医は健康診断と面接指導等の実施、そして、これらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置や作業環境の維持管理に関することや、労働者の健康管理に関することなどを行うことになっています」と解説します。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた実際のトラブル事例をもとに、波多野弁護士に解説を聞きました。

 <1:産業医から酷い言葉を投げかけられ、症状が悪化>

うつ病で仕事を休職した相談者は、復帰後、1か月ごとに産業医と面談しているのですが、悩みを打ち明けると「ありえない」「気のせい」と言われて笑われたり、反論しようとすると圧迫感を感じる言葉を投げられるそうです。さらに、産業医は、会社の総務担当を呼び出して、2人で言葉の圧力をかけてくるため、相談者は吐き気や不眠で会社に行くことが難しくなりました。他の産業医に変えて欲しいと思っています。

<解説:言動だけでなく、会社関係者を呼んだことも問題>

この相談事例は、労働者の健康管理などを職責としている産業医としては、言動自体も不適切な対応ですし、総務担当者を呼んで一緒に面談するのも問題です。

労働者が復帰後の心身の状態や復職後の大変さなどを率直に述べるためには、会社関係者が同席していては、到底本音を語ることはできません。専門家の産業医は、労働者の健康管理を中心に労働者の実際の状況を率直に語ってもらって、適切な情報を得て初めて専門家の立場から労働者の健康管理などについて適切な意見が述べられるはずです。

 <2:産業医面談をせずに会社が休職命令>

体調不良で月に4日ほど欠勤した相談者は、勤務の継続を希望していましたが、上司との面談で休職命令が出されました。休職の診断書の依頼のために、精神科に行くように指示されたそうです。産業医の面談もなく、本人の希望を無視して休職命令が出たことに疑問を感じているそうです。

<解説:産業医の存在意義を無視するような対応は問題>

本人の希望を無視して休職命令が出た点は、産業医の存在意義を無視するような会社の対応で問題があると思います。まず休職の必要性があるかどうかは、事業場の業務内容や状況を把握しているであろう産業医の面談を経て、その産業医の意見を踏まえて休職するかどうかを決めるべきだと考えられます。

 <3:産業医の指摘に会社が聞く耳を持たない>

産業医からの相談も来ています。ある企業では、月に80時間以上の残業をしている人が相談に来るそうです。来る人はみな「だるい」「疲れが抜けない」と不調を訴えています。この産業医は、「人事の担当者の方には残業を減らすよう伝えていますが、トップが聞く耳をもたない」と悩んでいるそうです。産業医として、残業を減らすために何ができるのかを尋ねています。

<解説:事業主が助言を聞かないと、産業医の存在意義がなくなる>

せっかく産業医が有益な指導や助言をしても、それを生かすのは最終的には事業主ですから、このようにトップが聞く気持ちがないと、産業医の存在意義がなくなってしまいます。残念ながらこのような事業主は少なくないと思います。

▼波多野弁護士の解説まとめ

産業医は労働者の健康管理、労働環境の改善などに大きな役割を果たすべき立場にあります。しかし、産業医がその役割を果たさない、産業医がその役割を果たしていても、事業主が聞く耳を持たないといった事態に陥ると、産業医の存在は有名無実になってしまいます。

例えば、客観的に就労ができない状態の労働者について、たとえ事業主が就労を継続してもらいたいという意向を有していても、産業医が事業主から独立した専門家として、事業主の意見に左右されずに、医学的な見地から就労を禁止する指導などを行い、労働者の心身の安全を確保することは極めて重要なことだと思います。

▼編集部より

今回、3つの事例を掲載しました。いずれも、労働者と産業医、会社の関係のどこかに問題があるケースです。この記事を読んでいる会社員の方々は、自分の会社の産業医がどんな医師で、どうすれば相談できるかご存知でしょうか。心身の不調は誰にでも訪れる可能性があるだけに、自分の職場の産業医と会社の健康管理の体制がどうなっているか、きちんと調べておいた方がいいでしょう。

取材協力弁護士 波多野 進 (はたの すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
同心法律事務所

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