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「痴漢」で逮捕されたことが会社にバレて、配置転換命令…従う必要はある?
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「痴漢」で逮捕されたことが会社にバレて、配置転換命令…従う必要はある?

痴漢で逮捕されたことを理由に会社から異動・退職などを命じられた場合、従わなければならないのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこのような投稿が寄せられました。

投稿者は、痴漢をしてしまい、迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されましたが、結果は不起訴でした。しかし、会社に痴漢の事実が伝わった後、会社から遠方への配置転換を命じられ、従わなければ解雇だと告げられたそうです。

逮捕されたことを理由に、配置転換や解雇というのは妥当なのでしょうか。起訴された場合とされていない場合で違いはあるのでしょうか。近藤暁弁護士に聞きました。

●配置転換命令が無効となる場合とは?

配置転換命令については、労働契約に職種や勤務場所の限定がない限り、会社に広く裁量が認められます。しかし、(1)業務上の必要性がない場合、(2)業務上の必要性とは別の不当な動機・目的等がある場合、(3)配転により労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合、配転命令は権利の濫用として、無効となります。

今回のケースでは、企業秩序の維持といった「業務上の必要性」により配転命令がなされた可能性もありますが、定かではありません。

もし配転命令が痴漢行為や逮捕の事実に対する制裁といった動機・目的によるものであれば、「不当な動機・目的」によるものとして権利の濫用となるでしょう。刑事事件の被疑者・被告人の有罪が確定するまでは、無罪の推定を受けることとの関係でも問題があります。これは起訴された場合でも、されていない場合でも違いはありません。

ちなみに、有罪判決が確定した場合でも、これに対する制裁として配転がなされるのであれば、配転の動機・目的としては不当といえます。ただし、有罪判決などによる業務の混乱や支障を解消するために配転がなされるのであれば、業務上の必要性があるといえ、動機・目的も不当とまではいえないでしょう。

また、単に遠方への配転というだけでは通常「労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」とはいえませんが、業務上の必要性の有無や内容によっては権利の濫用となる余地があります。

有効な配転命令に従わない場合、配転理由の説明や説得等の手続を踏んだ上であれば、解雇も有効となるでしょう。これに対し、配転命令が無効である場合、これを前提とする解雇も無効となります。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

近藤 暁
近藤 暁(こんどう あき)弁護士 近藤暁法律事務所
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。

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