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仮想通貨「億り人」急死で遺族にふりかかる「相続の難題」 生前対策も重要に
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仮想通貨「億り人」急死で遺族にふりかかる「相続の難題」 生前対策も重要に

クラウドに保存したデータやSNSへ投稿した内容ーー亡くなった方がそのような“デジタル遺品”を残していた場合、どう整理すべきかという問題があります。

デジタル遺品のうち、「仮想通貨」は場合によっては巨額な遺産となる可能性もあり、相続に関する問題点がいくつか指摘されています。

●資金調達の手段としても注目されている「仮想通貨」

そもそも仮想通貨とは、インターネット上で使用できる電子通貨です。目に見えない形で存在し、国家による価値の保証を持ちません。それに対して、私たちが普段用いる円やドルのような通貨は法定通貨といい、特定の国家が発行しています。

仮想通貨といえば「ビットコイン」が有名ですが、実はソーシャルゲーム内で課金して得るようなコインも仮想通貨の一種です。ゲームのプレイヤーは、法定通貨をゲーム内用コインに換金し、得た仮想通貨をアイテムなどの購入に利用できます。

また、仮想通貨を利用した資金調達の手法も注目されています。その手法はICO(Initial Coin Offering)とよばれ、企業やプロジェクトなどが独自に仮想通貨を発行し、投資家がそれを流通済みの仮想通貨で購入することで取引が成立する仕組みです。

●法律における「仮想通貨」の地位

さて、2017年4月に資金決済法において仮想通貨は支払手段のひとつである、と定められました。つまり、仮想通貨には財政的価値が認められたことになります。

仮想通貨の取扱いに関する個別具体的な法令解釈規定等は非常に少ないですが、2018年3月23日に開かれた参議院の財政金融委員会で、国税庁の藤井健志氏が「仮想通貨は相続税の課税対象となる」という旨の答弁を行ったことで相続税が課税されることも明らかになりました。

しかし、仮想通貨の相続に関しては大きな懸念点が2つあります。

ひとつは「相続財産の評価」についてです。

相続税を計算する場合における相続財産の評価は原則として死亡日における時価によります(相続税法第22条)。また財産評価に関する取扱方法の全国的な統一を図るため財産評価基本通達が定められており、この財産評価基本通達に「評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する(財産評価基本通達5)」と規定されています。

仮想通貨に関する個別具体的な財産評価基本通達は現在(平成30年9月22日時点)のところ定められていないため、取引所により取引価格を異にする仮想通貨がどのような種類の財産であるか、どのような方法で評価されるべきかを判断するのは非常に難解です。

また、もうひとつの問題として、「アカウント情報の管理」があります。

たとえば仮想通貨の持ち主が突然亡くなった場合、パスワードなどのアカウント情報が分からずに相続人が仮想通貨を取得できなかったり、いくら残されているのか分からないまま相続税だけが課されてしまうなどといった懸念があるとされています。

●アカウント情報の共有は信頼性の高い方法で

昨年にはトレードで資産1億円を達成した「億り人」というワードも話題となりました。そんな夢のある仮想通貨ですが、万が一のときには遺された人にとって悪夢に変わってしまうかもしれません。

相続財産の評価については継続して税務に関する情報を収集し、アカウント問題については遺書に記しておくなどの生前対策が有効といえるでしょう。

【監修】

森山 貴弘(もりやま たかひろ)税理士

過去に信託銀行・証券会社・不動産関連会社等において税務相談をした経験や税務調査立会等の経験を活かし、税務調査を意識した税務顧問・相続税申告・事業承継支援等をおこなっている。またセミナー講師を通じて不動産投資に関する節税対策やセカンドオピニオン等の税務助言もおこなっている。

事務所名 : 森山税務会計事務所

事務所URL: https://mtax-sz.com/

(弁護士ドットコムニュース)

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