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婿養子の夫、離婚で「妻の親の遺産をもらう権利がある!」…「300万円」めぐり大バトル
写真はイメージです(Taka / PIXTA)

婿養子の夫、離婚で「妻の親の遺産をもらう権利がある!」…「300万円」めぐり大バトル

夫婦が離婚する際には、財産をめぐり「どっちのものか?」と、バトルになるのはよくあることだ。弁護士ドットコムに相談を寄せた女性の場合、「母から相続したお金も財産分与しなければならないのでしょうか」と質問している。

相談者は、母親が亡くなった際に300万円を相続した。夫は、相談者の両親と養子縁組をおこなった「婿養子」だ。本来であれば、婿養子である夫も相続人なのだが、夫は1円ももらわず、遺産分割の協議書に署名捺印。相談者のみが相続することになった。

その後、相談者夫婦は夫婦仲が悪化し、離婚が決まった。その話し合いの際、夫は「相談者(妻)が相続したお金を、自分ももらう権利がある」と主張し始めたのだという。なお、相談者は、生活費などに充てていたため、満額は残ってはいない。

遺産分割の合意をしていたとしても、相続した財産は財産分与の対象となるのだろうか。山本明生弁護士に聞いた。

●「自らが納得して行った遺産分割後は遺留分の請求はできない」

今回のように、遺産分割に合意した後になって、遺留分を請求することは可能なのか。

「遺留分権利者は、遺留分が侵害された場合には、遺留分請求をすることが可能です。しかし自らが納得して行った遺産分割後は遺留分の請求は出来ません。

遺留分の請求は、被相続人の財産処分行為によって自らの遺留分が侵害された場合に認められるものであるからです」

●相続した財産は「財産分与の対象にはならない」

相談者が母から相続した300万円も、財産分与の対象となるのでしょうか。

「財産分与とは、夫婦が離婚した場合に、その一方が婚姻中に形成した財産を精算するためにその分与を求めることをいいます。その分与対象となる財産は、原則として当事者双方が互いの協力によって得た財産です。

今回、問題となっている相続財産は、当事者双方がその協力によって得た財産とはいえず、財産分与の対象にはなりません(財産分与の対象外である「特有財産」となります)」

●離婚から2年以内なら「財産分与について調停で協議できる」

離婚について合意しても、相談者のように金銭関係で話がまとまらない場合もある。このような場合、どうすれば良いのか。

「金銭関係の合意も、離婚が成立する条件の1つですから、それがまとまってから離婚する方が多いと思います。しかし、離婚前に話がまとまらなくても、財産分与については離婚から2年以内であれば、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することが出来ます。

今回のケースのように、離婚すること自体の合意が出来ているのであれば、当事者の身分関係を確定させるためにまずは協議離婚をし、その後、財産分与についてじっくり調停で協議することも考えられます。

なお、子がいる場合、親権者については離婚時に決定しておく必要がありますので注意が必要です」

プロフィール

山本 明生
山本 明生(やまもと あきお)弁護士 山本明生法律事務所
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。

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