妻と離婚調停をしている男性が、自身の行為が「DVに該当するのか」と、弁護士ドットコムに相談を寄せました。
男性によれば、妻側代理人からの書面に「妻と娘に暴力を振るったとの記述があった」そうです。しかし、男性は「娘の見ている前で妻を怒鳴ったことはありますが、娘には一切、怒鳴った事も手を挙げた事もありません」と言います。相談者の認識では、娘に対する直接的なDVをしたことはない。つまり「暴力を振るったとの記述」は間違いだと言いたいようです。
DVというと直接的な暴力を連想しますが、それ以外にも「暴力」に含まれる行為には、どんなものがあるのでしょうか。DV問題に詳しい早川雅子弁護士に聞きました。
●4つの虐待「身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待」
「相談者にはその自覚がないようですが、『妻と娘に暴力を振るった』との記述は間違いではありません。
『児童虐待の防止等に関する法律』の2条で、児童に対する虐待を(1)身体的虐待、(2)性的虐待、(3)ネグレクト、(4)心理的虐待の4つに分類しています。両親間の身体的なDVを見ること、激しい口論を子どもが聞いてしまうことは、『面前DV』と呼ばれ、同条4項に該当する(4)心理的虐待となります。
相談者は、妻を怒鳴るなどの行為は認めています。これが(4)の面前DVに該当するのです」
DVを目撃すること自体が「虐待」にあたるのですね。直接的な暴力でなくても、どのように影響するのでしょうか。
「子どもは、両親が仲良くしてくれることを望んでいます。自分の父親が、自分の母親を攻撃している姿を見たくありません。その事実を肯定したくないことから、解離性障害やうつ状態になることがあります。面前DVは、このように子どもの心理(脳)に悪影響を及ぼすと言われています。
妻に対するDVも児童虐待も重大な人権侵害です。DVは他人(妻や子ども)に対する思いやりや、いたわりといった人権尊重意識の希薄さの現れとされます」
離婚協議において、暴力があったことはどのように影響するのでしょうか。
「妻に対する暴力があることから、調停が不成立でも、訴訟で離婚が認められることになるでしょう。また、妻からの慰謝料請求も認められると思われます。
なお、子どもとの面会交流は、事案によりますが、子どもの心理に及ぼす影響が大きく、子どもが明らかに父親を拒否している場合であれば、認められないこともあります」