「結婚したいけど、プライベートで出会いのチャンスがない」という男女の間で、結婚相談所が人気だ。結婚相談所に登録して、パートナーと出会い、幸せな結婚ができたという話も聞く。
その一方、結婚できないまま、お金と時間だけを費やしたという声もネット上にはある。ある掲示板では、「お付き合いが始まるどころか、見合いすら成立せず。相手からの申し込みはないし、こちらから申し込んでもダメ」というアラフォー男性の書き込みに、多くの同情が寄せられていた。この男性は半年間、ある結構相談所を利用していたが、まったく結婚できる気配がないため、退会を決意したのだという。
結果的に結婚できなかった利用者からすれば、相談所に恨み節の一つも言いたくなるだろう。もし、そうした人が、「結婚できなかったのだから、費用は返してほしい」と訴えたら、主張が認めてもらえる可能性はあるだろうか。大村真司弁護士に聞いた。
●「結果」を約束しているかどうか?
「なんらかの業務を依頼する契約は、『業務の結果』にお金を払っているものと、『業務そのもの』にお金を払っているものに、分けることができます」
このように大村弁護士は切り出した。
「たとえば、大工さんに家を建ててもらう場合、普通は完成した家、つまり『業務の結果』と引き替えにして、お金を支払う契約をします。
相手とこうした契約を結んだなら、一定の水準の家が完成しなければ、お金を支払う必要はありません」
それでは、「業務そのもの」に対してお金を払うというのは、どういう場合だろうか?
「たとえば、医者にかかる場合ですね。医者は病気を治すことを目標にしますが、どんな名医でも『必ず病気を治す』ことは約束できません。弁護士も同じく、『必ず訴訟に勝つ』とは言えません。
だから、医者にかかったり、弁護士を雇うときは、結果ではなく『業務そのもの』に対して、お金を支払う契約をするのですね」
大村弁護士はこのように説明する。そうすると、「結婚相談所との契約が、どちらのタイプか」が、ポイントになりそうだ。
「さきほどと同じように考えると、結婚相談所が『絶対にあなたを結婚させます』と約束することはできませんね。
憲法にも書かれていることですが、結婚をするためには『相手との合意』が必要で、その合意は誰にも強制できないことだからです。
したがって、医者や弁護士のケースと同じように、結果的に結婚できなかったからといって、代金の返還を求めるのは不可能だと思います」
●サービスに不満なら「中途解約」できる
もし、結婚相談所のサービスがいまいちでも、返金はありえないのだろうか?
「たとえば、『もともと聞いていた話よりも登録者数が少なかった』とか、『結婚相談所が十分なマッチングを行わなかった』というように、その相談所が十分なサービスを提供していなかったとしたら、契約を守らなかった(債務不履行)として、お金を返してもらえる可能性があります。
しかし、登録人数がどれくらいなのかを証明するのは難しいですし、『十分なマッチング』の水準を一義的に決めるのは難しいと思われます。したがって、証明の観点からして、『結婚相談所は、料金に対して十分なサービスを提供していなかった』と裁判所に認めてもらうのは、現実問題としてはなかなか難しいでしょう」
では、サービス内容に不満を感じたら、利用者はどうすればよいだろう。
大村弁護士は「費用に見合わないと思ったら、早めに止めてしまうのが正解です。結婚相手紹介サービスには、特定商取引法が適用されるので、中途解約が可能です」とアドバイスを送っていた。