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「夫が気持ち悪い!」妻に隠れて盗撮の示談交渉、示談金も家計から 妻は離婚を決意 
画像はイメージです(KY / PIXTA)

「夫が気持ち悪い!」妻に隠れて盗撮の示談交渉、示談金も家計から 妻は離婚を決意 

病める時も健やかな時も、愛し、敬い、慈しむのが夫婦の理想。とはいえ、配偶者が犯罪行為に手を染めていた時、それでも変わらず愛し続けられるものでしょうか。

「夫が盗撮事件を起こしていたので離婚したい」。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。夫の様子を不審に感じていた相談者がある日、夫の携帯をひそかに確認したところ、弁護士とのやり取りを発見しました。

弁護士とのやりとりは、被害者との示談交渉をめぐるもので、話の内容から夫も事実関係を認めていることがわかりました。「何事もなかったかのように振る舞う夫が気持ち悪い」と言う相談者は、婚姻は継続しがたいと考えています。

事件があったであろう時期から「夫は通帳を見せてくれなくなった」といい、「夫は(共有の)貯金から弁護士費用や示談金を捻出している」と相談者は考えています。夫が盗撮をしていたことを理由に離婚することはできるのでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。

●離婚に「理由」は必要?

ーーそもそも離婚する上で「理由」は必要なのでしょうか

離婚は夫婦間での離婚についての合意があれば、離婚事由(民法770条1項)が存在しなくても離婚することができます(未成年のお子さんがいる場合は親権者についての合意も必要)。

よって、本件において妻が離婚を望む理由などを述べつつ夫に対して離婚を申し出て、それに夫が承諾すれば問題無く離婚できることになります。

一方で、夫が離婚を拒み続ける場合、離婚訴訟での離婚認容判決を得る必要が生じます。そして判決によって離婚が認められるために「離婚事由」の存在が必要となるのです。

●相手の犯罪行為を理由に離婚は認められる?

ーー今回のケースで、夫が離婚を拒否した場合、裁判所はどう判断しますか

今回は夫において盗撮事件があったとのことですが、妻側は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(5号。いわゆる婚姻関係の「破綻」)に該当すると主張していくことになるでしょう。盗撮行為は離婚事由の1つである「不貞行為」(1号)には該当しません。

裁判所の傾向としては、判決直前までの事実経過等を踏まえ「総合的にみて」、その婚姻関係が既に破綻しているか否かを判断することになります。

相談者のケースでは、単に夫が何らかの罪を犯していた、それで弁護士に相談や依頼をしていたということだけでは、婚姻関係が破綻していると認定されるには弱いかもしれません。

しかし、本件のようにその罪名が「盗撮」という性的な犯罪であること、妻にそれを秘匿して生活を継続させていたこと、これら事実を知った妻の精神的なショックや苦痛は著しいものといえます。それ加え、経済的にも妻に通帳を不開示にした上で、弁護士費用などを支出していたことなどまで考慮しますと、総合的にみて夫婦関係は既に破綻しているとの判断がなされる可能性は十分にあるかと思われます。

また、夫のこれらの行為によって婚姻関係が破綻に至ったということであれば、離婚請求に併せて夫に対して離婚慰謝料の請求(民法709条、710条)を求めることも十分可能と言えるでしょう。

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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