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「再婚禁止期間」廃止や「嫡出推定」見直し閣議決定、「違憲」勝ち取った作花知志弁護士に聞く
写真はイメージです(happyphoto / PIXTA)

「再婚禁止期間」廃止や「嫡出推定」見直し閣議決定、「違憲」勝ち取った作花知志弁護士に聞く

女性が離婚後300日以内に出産した子どもは「元夫の子」と推定する現在の民法を見直す改正案が10月14日、閣議決定されたと報じられた。

これは、明治時代から続いている嫡出推定の規定だが、女性が離婚後300日以内に別の男性の子どもを出産した場合でも、元夫の子とされてしまっていたため、女性が出生届を出さずに子が無戸籍になるなどの問題が起きていた。

報道によると、政府が決定した改正案では、離婚後300日以内であっても、女性が別の男性と再婚していれば、子どもを再婚相手の子とすることができるようになる。また、女性だけ離婚から100日間再婚ができないという再婚禁止期間も廃止されるという。

かつて、再婚禁止期間は6カ月とされていたが、これは違憲であるとして女性が訴訟を起こし、2015年12月に100日を超える部分については違憲とする最高裁判決が下されている。この判決を受けて、2016年には再婚禁止期間を100日に短縮するよう民法が改正された。

この訴訟で、女性の代理人だった作花知志弁護士に、今回の嫡出推定の見直しや再婚禁止期間廃止の意義を聞いた。

●無戸籍児問題の解決に一歩

——これまでの嫡出推定は、どのような問題が生じていたのでしょうか?

たとえば、夫の暴力を避けるために別居した女性が、新しいパートナーの子どもを出産した場合、その子の出生届を出すと、夫の子であると推定されてしまいます。

そのため、女性は子どもの出生届を出せなくなり、その結果、子どもは戸籍がない「無戸籍児」となってしまっていました。

——嫡出推定の見直しはどのような意義があるのでしょうか?

実は、これまでも最高裁は「法律が保護する親子とは、イコール血のつながりではない」という立場をとっていました。その解釈ならば、離婚した女性がすぐ再婚して子どもが生まれた場合、後婚の夫の子と推定すればよかったはずです。それがドイツ法の立場です。

ところが、国会は、あたかも「法律が保護する親子とは、イコール血のつながりである」という立場の法律規定を長年放置してきました。その結果、無戸籍児が生まれていたのです。それは「子の福祉」を害し、「子の利益」に反することでした。

今回予定されている法改正は、その意味で、「チルドレン・ファースト」の法改正であると言えると思います。

●「最高裁の法解釈論を純粋に実現する内容」

——作花弁護士が代理人をつとめ、違憲判決を勝ち取った再婚禁止期間について、廃止されるという決定がされました。あらためて、2015年の最高裁判決の意義を教えてください。

2015年12月16日最高裁大法廷判決は、女性の再婚禁止期間を100日を超えて設けることは許されない、と判示しました。それは女性の婚姻の権利を必要な限度を超えて制限するからです。

その一方で、最高裁大法廷判決は、子の嫡出推定規定の重複を避ける目的で女性の再婚禁止期間を100日まで設けることは許されると判示しました。「子の福祉」を実現するために、女性の婚姻の権利に対して必要最小限度の制限を加えることは許されるとしたのです。

——今回の再婚禁止期間廃止はどのような意義があるのでしょうか?

2015年12月16日最高裁大法廷判決は、女性の再婚禁止期間を100日まで設けることは許されるとしたのですが、最高裁自身が「法律が保護する親子とは、イコール血のつながりではない」という立場の解釈をしていたのであり、その解釈からすると、離婚した女性がすぐ再婚して子どもが生まれた場合、後婚の夫の子と推定すればよかったはずです。

それなら女性の再婚禁止期間を設ける必要性はなく、子の福祉や子の利益にも適合します。その意味で、今回の法改正は、1898年に制定された「親のための親子法制度」が、120年以上を経た21世紀に至り、ようやく「子のための親子法制度」へと変容することを意味しています。

法改正は、最高裁の法解釈論を純粋に実現する内容であり、かつ「チルドレン・ファースト」を実現するものです。

プロフィール

作花 知志
作花 知志(さっか ともし)弁護士 作花法律事務所
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。

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