ひどい暴言でパートナーを罵倒し、深夜から未明まで続く長時間の説教、性行為の強要、借金をさせ、人付き合いを制限するーー。このような精神的、性的、経済的、社会的暴力がDV防止法におけるDV行為と定義づけられていないとして、支援団体などが6月8日、法改正を求める約2万筆の署名を衆議院議員らに提出した。
他に、身体的暴力以外の暴力も保護命令の対象範囲に加えることや、同居していない交際相手や同性間のDVも対象にすることなども要望した。署名はChange.org上でオンライン署名で行ったもの。
同日、衆議院議員会館で開かれた院内集会では、「多くの被害者の声を受け止められるような法制度を作ってほしいと思っているが、この緊急性が伝わっていない。現状を知っていただき、前に進めてほしい」(北仲千里・NPO法人全国女性シェルターネット代表理事)などと、被害者支援に携わる人たちから被害者の置かれた切実な事情が伝えられた。
●DVの本質はパートナーによる支配
武井由起子弁護士は「コロナ禍で(DV被害の)状況は悪化し、相談件数は増加しているが、裁判所による保護命令は過去最低件数の1465件しか出されておらず、適切な保護を受けられていない現状がある。
原因のひとつとして、DV防止法では、結婚しているカップル間の暴力のみが対象とされているため、同性カップルや交際中のカップルでDVに苦しんでいる人たちを救済することが難しくなっているため」と問題点を指摘した。
また斉藤秀樹弁護士は、法改正が望まれる現状を次のように話した。
「DV防止法における暴力とは、身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と限定的に考えられている。そのため被害を訴えても、(身体的な暴力による)怪我をしていないときなどは支援を受けられず、加害者からはでっち上げ、虚偽、捏造と非難されることが多発しているのが現状だ。
DVというと、身体的な暴力をふるうことと考える人が多いが、DVの本質はパートナーによる支配で、暴力は支配のための道具にすぎない。加害者はいつも暴力をふるう訳ではなく、一度、被害者に恐怖を与えておけば、あとは無言、無視だけでも相手の支配を続けることができる状況になっている。これを救済するのが法改正の目的だ」。