「いずれ結婚したい」と思う女性にとって、長すぎる同棲生活は不安になるものです。弁護士ドットコムにも「彼氏と同棲して2年になりますが、『内縁の妻』と認めてもらえないのでしょうか」と相談を寄せています。
相談者によると、彼氏の親が厳しいため、「結婚は親が年をとるか、亡くなるまで待ってほしい」と言われているそうです。
相談者は、せめて内縁の妻として認めてほしいと考えており、「どのような証拠を残しておけば内縁の妻と認めてもらえますか」と聞いています。
山口政貴弁護士の解説をお届けします。
●内縁関係と単なる交際・同棲とのちがいは?
ーー内縁関係は単なる交際、同棲とどのように違うのでしょうか。
内縁関係は、俗に「事実婚」とも呼ばれています。
婚姻届は提出していないものの事実上夫婦と同様の関係にある男女のことを指しますが、「事実上夫婦と同様」という点が単なる交際、同棲とは異なります。
内縁関係が認められると、法律上の夫婦とほぼ同様の権利義務が発生します。
浮気をしたら慰謝料を払わなければなりません。また、一方的に内縁破棄をされた場合は相手方に慰謝料請求することが可能です。内縁解消時には財産分与を請求することもできます。
しかし、遺言がない限り、相続権が認められない点が、婚姻関係との大きな違いです。
●内縁関係が認められるのはどんなとき?
ーーどのような場合、単なる同棲ではなく「内縁」関係にあるといえるのでしょうか。
実は内縁の場合は結婚と違い、明確な規定が法律にありません。婚姻届を提出することで、「結婚した」と認められる結婚とは異なります。
抽象的にいえば、「婚姻届は出していないものの夫婦としての実態を備えている場合」に内縁が認められることになります。
具体的には「将来的に婚姻する意思が双方にある」という主観的な事情のほかにも、次のような客観的な事情が必要になります。
(1)結婚式を挙げた、(2)長期間同居している、(3)認知している子供がいる、(4)家計が同一である、(5)住民票上同一世帯に入っている、(6)会社や親族から夫婦として認められ、そのように扱われている、といった事情です。
ーー今回のケースの場合はいかがでしょうか。
今回のケースは、彼が「結婚は待ってくれ」と言っている以上、婚姻意思がないと考えられます。また、挙式をおこなったり、親族から夫婦として認められていたりするような事情もなさそうです。
残念ながら、2人は単なる同棲関係にとどまり、内縁関係の成立を主張するのは難しいと思われます。
(弁護士ドットコムライフ)