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弟が離婚協議、兄は「代理人になりたい」と希望…親族はどこまで介入できる?
写真はイメージです(polkadot / PIXTA)

弟が離婚協議、兄は「代理人になりたい」と希望…親族はどこまで介入できる?

「離婚調停がこわい」「話し合いがまとまるか不安」など、離婚に対して不安を抱く人は少なくない。1人で家庭裁判所に行くことに抵抗を感じている人もいる。

子どもやきょうだいが離婚することになった場合、付き添ったり、力になったりしたいと考えている人もいるだろう。当事者としても、離婚協議や調停の場に親族が側にいることで、安心できる場合もある。

弁護士ドットコムにも「離婚に向けて話し合いを進めている弟の代理人になれますか」という質問が寄せられている。

●本人にかわって親族が協議することはできる?

協議離婚の場合、親族は「代理人」になることはできるのだろうか。小松雅彦弁護士は、次のように説明する。

「『協議離婚すること』自体を親族が代理人として決定することはできません。結婚や離婚などの親族関係にかかわる重要な判断は本人だけができるので、代理になじまないのです。

ただし、夫婦間で離婚の合意が成立し、離婚届も作成されている場合に、親族が『使者』として役所に届け出をすることは可能です」

では、本人がいない場で、親族が「代理人」として、離婚するか否か、離婚するとした場合の金銭や子の親権などについて協議することはできるのだろうか。

「私は不適切ではないかと思います。離婚するか否か、離婚の条件は、非常にデリケートなことが多く、本人の意思を十分尊重しなければなりません。親族はかえってバイアスがかかり、本人の意思と齟齬(そご)が生じることもあります。

また、相手方が暴力的、感情的だった場合に、十分対応ができないこともあります。十分な法的知識・経験がないために、不合理な約束をしたり、本人が不利な状況に追い込まれることもあります。

相手に弁護士がついていれば、『本人の意思確認ができない』と言われて話し合いが進まないかもしれません」

親族が「代理人」として、本人と一緒に話し合いの席に立ち会うことも難しいのだろうか。

「親族代理人がいることで『本人の真意がゆがめられてしまう』と主張され、同席を拒否されることも多いと思われます。相手方に弁護士がついていれば普通は拒否されるでしょう。

当事者を守り、きちんと権利主張するために家庭裁判所の調停手続きがあります。家事調停は調停委員会がサポートしてくれるので、弁護士をつけなくてもでき、費用も安いです」

●離婚調停で親族は代理人になれる?

離婚調停において、親族は代理人になることはできるのだろうか。小松弁護士は「基本的にできません」と語る。なぜだろうか。

「家事調停、審判は本人が出頭しなければなりません。ただし、弁護士を手続代理人に選任していれば別です。

なお、家庭裁判所の許可がある場合に親族も手続代理人になり得る可能性はあります。しかし、許可が出た例を私は経験したことがありません。やはり当事者ご本人の真意が確認できないからだと思います。

ただ、裁判所に行くにあたって、親族の方が付き添うケースは多いです。調停は待ち時間が結構あるので、待合室で親族の方がそばにいると心理的にも助かると思います」

離婚手続において、弁護士は必ずつけた方が良いのだろうか。

「夫婦で円満に合理的な話し合いができるなら、もちろん弁護士は不要です。

離婚は結婚よりずっと大変なものです。精神的な負担が非常に大きいケースも少なくありません。代理人の弁護士がいることで、精神的苦痛がある程度減ることも多いです。まして感情的対立が激しかったり、暴力の問題があると弁護士をつける必要性は高まります。

もちろん、弁護士を代理人にした方が有利に運ぶことも多いです。弁護士を代理人にしないまでも、離婚においての財産分与、慰謝料、親権、養育費、面会交流などについて、当事者のみで協議し、文書などを作った場合、不合理な内容になることもあります。離婚をしようという場合、弁護士に相談はすべきだと思います」

プロフィール

小松 雅彦
小松 雅彦(こまつ まさひこ)弁護士 多摩オアシス法律事務所
後見・相続・遺言を多数取り扱う。「気軽に相談できる、親しみやすい法律家」をモットーに身の回りの相談にも対応している。薬害エイズ事件やハンセン病国賠事件、薬害肝炎事件なども担当した。

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