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「もっと飲め」先輩が飲酒強要、酔いつぶされて全裸撮影...「アルハラ」の法的問題

忘年会や新年会で、酒を飲む機会が多い年末年始は、アルコールが苦手な人には辛い時期かもしれません。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、飲み会で先輩に飲酒を強要された男性からの相談が寄せられています。

この男性は酒が弱いため、乾杯のビールを飲んだ後は、アルコール度数低めのお酒をゆっくり飲むのが常だったそうです。ところが、ある時の飲み会で、先輩社員からもっと飲むように強要されたといいます。男性は「これ以上は急性アルコール中毒の危険があるので飲めない」と断ったにも関わらず飲まされ、潰れて眠ってしまいました。

すると後日、とんでもないことが発覚しました。男性は眠っている間に服を脱がされ、全裸の状態で写真を撮られていたのです。先輩から茶化すようにその話をされた男性は頭が真っ白になり、そのまま会社を辞めてしまったそうです。「今度の飲み会が恐ろしくて仕方ありません」と語っています。

お酒が苦手な人に無理やり飲ませることは「アルハラ(アルコール・ハラスメント)」などと呼ばれることもありますが、先輩社員からの飲酒強要には、どのような法的問題があるのでしょうか。加藤寛崇弁護士に聞きました。

 ●強要罪などの犯罪が成立する可能性あり

いわゆる「パワハラ」「セクハラ」もそうですが、これらの用語には法律・判例上の定義はありません。法的側面からいえば、「〇〇ハラスメントになるかどうか」ではなく、端的に「違法かどうか」を検討することになります。

一般に「アルハラ」と呼ばれる行為としては、「飲酒強要」「一気飲みをさせること」などがあるようです。

飲酒や一気飲みをさせる行為が違法になるかどうかは、上下関係など断れない状況にあったか、嫌がっているのを認識していたか、どれだけ執拗に勧めたか、といった事情で判断されるでしょう。

裁判例としても、「飲めないんです。飲むと吐きます」などと言って断った従業員に対して、「俺の酒は飲めないのか」などと語気を荒げて、グラスに酒を注いで飲酒をさせた(強要した)行為について、単なる迷惑行為にとどまらず不法行為であると判断された事例があります。

パワハラの事案でも、1回限りでは違法と言えない程度のからかい発言であっても、相手が嫌がる反応を示しているのに同様のからかい発言を続けたりした場合には、違法性が認められています。

セクハラ行為が強制わいせつ罪などに該当することもあるように、アルハラも立派に犯罪になり得ます。断っているのに無理に飲酒させれば、強要罪にも当たります。無理に飲酒させたことで、相手が死亡すれば、過失致死罪又は重過失致死罪も成立する余地があります。酒を飲ませておいて、酔いつぶれた人を放置すれば、保護責任者遺棄罪にもなり得ます。

また、今回のケースでは、相談者は、酔いつぶされた上に、寝ている間に衣類を脱がされ全裸を撮影されたとのことです。酔っている間に衣類を脱がして全裸を撮影した行為は、外形的には準強制わいせつ罪に当たり得る行為です。男性に対する行為で現実に刑事罰に問われることは考えにくいですが、悪質な行為であることは間違いありません。

具体的なやり取りにもよりますが、「これ以上は急性アルコール中毒の危険があるので飲めない」と断っているにもかかわらず、更に飲ませただけでも相当問題ですし、酔いつぶしてからの行為も悪質であることからすると、相談者の述べる事実関係が認められれば慰謝料請求が認められる事案と言っていいでしょう。

 ●アルハラが「許されない行為」だと広まれば...

アルハラを受けた場合の対処法ですが、基本的には断るしかないと思います。なかなか人々の意識が変わらないと断りづらいでしょうが、無理な飲酒は心身を傷つけ、死亡にすらつながります。

最初に、何が「アルハラ」か法的な定義はないと述べましたが、「アルハラ」という概念が無意味ということではありません。

かつては問題視されにくかった行為について、「セクハラ」という言葉が与えられたことで(少なくとも建前としては)否定的に捉えられるようになったように、言葉が与えられたことで人々の捉え方も変化します。そのことは、裁判でも、「セクハラ」「パワハラ」の違法性が認められやすくなる方向で作用しています。

「アルハラ」が裁判で争われた事例は「パワハラ」「セクハラ」に比べてかなり少ないようですが、「アルハラ」という言葉が定着して「許されない行為」だという意識が広まれば、もっと増えるのではないでしょうか。

取材協力弁護士 加藤 寛崇 (かとう ひろたか)弁護士
東京大学法学部卒。2008年弁護士登録(三重弁護士会)。労働者側で労働事件を扱うほか、離婚事件など家事事件も多数扱う。日本労働弁護団、東海労働弁護団に所属。
三重合同法律事務所

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