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犯罪被害者の「同性パートナー」が国の給付金申請、認められる可能性は?
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犯罪被害者の「同性パートナー」が国の給付金申請、認められる可能性は?

名古屋市の住宅で2014年、住人の男性が殺害された事件で、被害者と同居していた同性パートナーの男性が昨年12月、国の犯罪被害給付制度にもとづいて、愛知県公安委員会に給付金の申請をおこなった。

報道によると、申請した男性は、約20年にわたって被害者と同居していた。自身の給料を被害者の口座に入金したり、被害者が家事を担当したりするなど、「夫婦同然の関係」だったという。

一方で、犯罪被害給付制度が対象としているのは、配偶者や子、父母など。事実上の婚姻関係にある相手も含んでいるが、同性パートナーが配偶者と同じ扱いを求めて申請したケースは全国的に珍しいようだ。今回の申請は認められる可能性はあるのだろうか。LGBT問題にくわしい藤元達弥弁護士に聞いた。

●内縁の配偶者も支給対象とされている

「法律には、遺族給付金の支給を受けることのできる遺族として、『犯罪被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)』(犯罪被害者等給付金支給法5条1項1号)が挙げられています。

つまり、『法律上』の配偶者にかぎらず、『内縁』の配偶者も支給対象とされています。

『法律上』の配偶者と『内縁』の配偶者は、夫婦としての実体は同様であるため、犯罪被害者の遺族として受ける精神的、経済的打撃は同じであり、給付金を支給して、その打撃を緩和する必要性は同様だという趣旨によるものです。

同性パートナーの場合でも、当事者の関係性が男女間の『内縁』と同じ程度であれば、この法律の趣旨が同様にあてはまり、『事実上婚姻関係と同様の事情にあった者』に含まれる、と解釈することは可能だと思います」

●行政は無難な対応をとる可能性

今回の申請が認められる可能性はどれくらいあるのだろうか。

「しかし、『内縁』の配偶者を『法律上』の配偶者と同様に保護している規定は、たとえば労働災害の遺族補償年金など、他の法律にもありますが、これまで、行政が同様の規定を同性パートナーに適用した事例は見当たりません。

行政は新しい解釈をとるより、同性婚が認められていない現状において、『同性パートナーは結婚に準じた関係になりえない』として、『事実上婚姻関係と同様の事情にあった者』に含まれないと無難に解釈することが予想されます。申請が認められる可能性は高くないでしょう」

これまでの制度に問題点はなかったのだろうか。

「『内縁』の配偶者を『法律上』の配偶者と同様に保護している法律の制定時において、同性パートナーへの適用の可否が議論されていないため、同性パートナーへの適用の有無が不透明です。そのため、本来保護を受けられる可能性のある人たちが放置されてきました。非常に問題だと思います。

今回のような申請を積極的におこなって行政の判断を求めた上で、判断に不服があれば、訴訟を提起して裁判所に法律の解釈を明確化させたり、また同性パートナーが男女間の内縁当事者と同様の保障を受けられる法改正を促したりして、制度を改善していくことが必要だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

藤元 達弥
藤元 達弥(ふじもと たつや)弁護士 藤元法律事務所
2010年に弁護士登録(東京弁護士会)。新宿二丁目近くに法律事務所を開業し、LGBT当事者からの法律相談や、案件依頼に積極的に応じている。

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