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「ネットの世界は、キャラがないとダメです」白ブリーフ・岡口裁判官が語る「SNS論」
愛用のガラケーとともに笑顔を見せる岡口裁判官

「ネットの世界は、キャラがないとダメです」白ブリーフ・岡口裁判官が語る「SNS論」

ツイッターの投稿を問題視され、戒告の懲戒処分を受けた東京高裁の岡口基一裁判官。岡口裁判官の「白ブリーフ」姿は、早くからネットユーザーたちの心をつかみ、アカウント開設から凍結までの約10年で、4万人以上のフォロワーを獲得した。一部メディアは「白ブリーフ」を批判的に報じたが、実は、最高裁による戒告処分とは、直接関係がない。この観点からすれば、少なくとも、黒ではなく「白だった」といえるだろう。

ネット上で人気者となった岡口裁判官だが、近年のツイッターの変化、つまり、「ゆるい空間」ではなく「攻撃の場」として変わってきたことを悲嘆する。ツイッターのアカウントを凍結されてからは、フェイスブックを利用しているが、「ツイッターはカオスが楽しめる唯一の空間だった」と振り返る。

岡口裁判官インタビューの後編にあたるこの記事では、ツイッターをはじめとした「SNS」について、彼なりに思うところを聞いた。(編集部・山下真史)

●「フォロワー獲得のためには、中途半端な落とし方ではダメ」

――岡口さんは「白ブリーフ」姿のアイコンで知られていますが、きょうお会いして、身体にあったスーツを格好良く着こなしている印象を受けました。ファッションにこだわりはあるんでしょうか。

普段から、身体のラインがきれいに見える服を好んで着ています。よく着ているのは、山本太郎・参議院議員も愛用の洋服ブランド「VODIX」のものです。ほかにも「Thom Browne」というブランドも好きです。デザイナーのThomBrowneさん自身がマッチョな体形で、自分の身体がきれいにみえる服を作っているのです。ちなみに僕の(きょうの)ネクタイはグッチのウルヴァリンです。木更津のアウトレットで安く買ったものです。

――ファッションにこだわりのある岡口さんが、どうして「白ブリーフ」をアイコンにしたのでしょうか。

フォロワー獲得のためですね(笑)。僕がはじめたころのツイッターは、すごくゆるい空間でした。ああいうところは、裁判官が偉そうにふんぞり返っていてはダメ。そんな人は、せいぜいフォロワー2000人くらいにとどまります。

だからといって、自分をアニメ化したアイコンとかでは全然インパクトないですよね。フォロワー獲得のためには、中途半端な落とし方ではダメだと思ったんです。最高裁当局が目を剥くような仕掛けをしないといけないと。

――それで、「白ブリーフ」にすることで、実際に当局が目を剥いたのでしょうか。

いえ、当局は「白ブリーフ」を問題視したことは一度もありませんでした(笑)

――白ブリーフ以外のアイデアはありましたか。

全部脱いで、「手パンツ」とか・・・。

――最初から、脱ぐ方向性は決まっていたんですか。

そうですね。お金を掛けずにインパクトを出せる唯一の方法ですから(笑)

●「予測可能性がないカオス空間を作りたかった」

――現在、岡口さんのツイッターは凍結されて、主にフェイスブックを利用されています。ツイッターとの違いはありますか。

フェイスブックは、弁護士たちも、実名で、まじめな議論をしている場です。一方で、ツイッターはカオスが楽しめる唯一の場だったような気がします。もっともっとカオスにしたかったのですが・・・。フェイスブックは仕掛けができないというのもありますね。ツイッターは「こういう投稿したら、どういうリアクションがあるか」という実験ができたんです。

――ツイッター上には、岡口さんの「なりすまし」アカウントがあります。岡口さんのフェイスブック投稿をそのまま転載しているだけのアカウントのようですが、把握されていますか。

そのアカウントは、僕が運営しているものではないのですが、フォロワーが1万を超えていますので、一応、どういうコメントが付いているか、確認しています。ただ、ちゃんとプロフィール欄に「なりすまし」「本人の許可なし」と書かれているので、コメントがあまり付かないですね。

――ツイッターで、男性ヌードを定期的に投稿していたのはなぜですか。

女性のヌードなどを載せると問題があるんですよね。セクハラだとか言われたり。男が男の裸を載せるのは問題ないんです。

――カオス化を狙ったんでしょうか。

そうですね。予測可能性がない空間を作りたかったんですよね。「この人は何がしたいのだろう」という。それができるのは、ツイッターだけだったんですよ。それ以外はなかなかそういう雰囲気にならないんですよ。「またやっている」とか「こういう感じね」とかにならないようにしたかったんです。飽きられちゃうのも嫌だし・・・いろんな意味で昔が良かったと思います。

――フォロワーを減らしたくなかったのでしょうか。

(ツイッターは)新しい表現の場だったんですよ。ある時期から、そういうのができなくなって・・・だんだん許されなくなってきたのでしょうね。

――SNS上で注目している人はいますか。

いないです。そもそも、僕はツイッターで、5人しかフォローしていませんでした。そのうち1人が、(お笑い芸人の)ハリウッドザコシショウです。ツイッターでは、どちらかというと、エゴサーチして、自分にコメントくれた人をいじったりしていましたね。「岡口」という苗字が珍しいから、だいたいサーチにひっかかる、というのもありました。

――ほかのSNSでも「表現の場」はあると思います。たとえば、YouTuberになったりはしないのでしょうか。

いろいろ考えないといけないですね。(若者に人気の)動画アプリ「TikTok」には、注目しています。要件事実ダンスとか(笑)

●「スマホ嫌い」はキャラ設定だった

――時事のニュースはどこから仕入れていますか。

特定のサイトは見ていないです。というのも、フェイスブックで何千人という弁護士さんと友達になっているため、みなさんのフェイスブックの「友達限定投稿」から、だいたい拾えるからです。その中でも、一般紙とかで報道されていないネタを取り上げるようにしています。「友達限定」ならではのコアな法曹業界ネタとかですね。

――過去には「スマホ嫌い」「ヘイトスピーチ反対」という内容の投稿もされていました。どういう理由があるのでしょうか。

ヘイトスピーチが出始めたとき(2000年代後半)、社会が怒らないことにすごくショックを受けました。Jリーグは「ヘイトスピーチはダメ」という態度をとっていましたし、京都地裁は在特会に賠償命令を下しましたが、それ以外は、社会が黙っていました。容認しているように感じて、ショックでしたよ。だから、「ヘイトスピーチ反対」の投稿は、啓蒙的な意味合いがありました。本当は、啓蒙なんかしたくないんですよ。上から目線だし。だけど、それでも言わないといけないレベルだと思ったんです。

――「スマホ嫌い」については?

あれは完全にネタです(笑)

――実はスマホを使っている?

使っていないですよ。きょうもガラケーしか持っていません。「スマホ嫌い」は、一種の「キャラ設定」です。ネットの世界は、キャラがないとダメです。いかにキャラを作るのかです。「スマホ嫌い」は、その1つの方法です。

スマホを持たないのは、四六時中、ツイッターやフェイスブックをやってしまうからです。集中力も欠くし、僕の場合は、本を書く量が激減してしまうでしょう。スマホに邪魔されるのは目に見えています。死ぬまでスマホ持たないと決めています。

――ガラケーは?

10年以上、同じものを使っていますよ。

――モバイルルーターは持っていますか。

持っています。職場にノートパソコンも持ち込んで、昼休みと午後5時以降に使っています。プライベートでは、パソコン(パナソニックのレッツノート)を持って、スターバックスに行きます。家にいるとネット環境があって集中できませんが、ネット環境のないスタバだと、好きなだけ本が書けますよ。そうやって、自分の時間を有効活用していきたいですね。

インタビュー前編「岡口裁判官『裁判所は政治力がないので、内部の人間を抑えつける』 懲戒の背景を考察」

インタビュー中編「岡口裁判官『要件事実マニュアルは掟破りだった』 裁判官の出版事情語る」

(弁護士ドットコムニュース)

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