日産自動車のゴーン前会長が、2008年のリーマン・ショック後にすすめたリストラ策で雇い止めにあったが、あの時のクビは本当に必要だったのか、正しかったのかーー。
期間工として子会社の日産車体(神奈川県平塚市)に勤め、2009年3月に雇い止めにあった男性(42)が1月29日、東京・霞が関の厚生労働省で会見し、「怒りしかない。説明責任を果たせ」と訴えた。
●雇い止め→生活保護を受けたことも
男性は、日産車体の製造ラインで期間工として半年以上、働いていた。
リーマン・ショックの影響で、日産は当時、グローバルで2万人規模の人員削減をすると打ち出し、実際に大量の雇い止めに踏み切った。男性もそのうちの一人で、現在は無職。雇い止め後はアルバイトで食いつなぎ、生活保護を受けたこともあったという。
会見で、男性の代理人を務める田井勝弁護士は、「仮に経営不振、倒産の危機に瀕していれば、私的な投資損を会社に付け替えられるはずはない。そのような余裕はない。2009年3月時点の解雇の必要性は本当にあったのか」と指摘した。
報道によるとゴーン氏は、自ら私的に抱えた17億円前後もの投資損を2008年ごろに日産に付け替えたとして、特別背任の疑いでも逮捕されている(ひとつ目の逮捕は、金融商品取引法違反の疑い)。
●日産の不当労働行為を認定
日産の雇い止め問題をめぐっては、2009年5月に元派遣社員ら5人が、雇用継続などを求めて横浜地裁に提訴したが、2016年12月までに全員の敗訴が確定していた。
ところが、神奈川県労働委員会は2018年2月、日産が労働組合との団体交渉に応じなかったのは不当労働行為にあたるとし、団交に応じるよう命令。派遣先の会社である日産を、派遣社員との関係で「使用者」と認定した。契約社員側との団体交渉も不誠実な団交とされた。
田井弁護士によると、命令を受けてもなお、日産側は誠実な交渉に応じる姿勢を見せていないという。田井弁護士は1月29日付で、日産に対し、誠実に団体交渉に応じ、この問題の全面解決をし、ゴーン氏の逮捕・起訴内容について元労働者に対し説明するよう求める文書を送った。
田井弁護士は「大量解雇は正しかったのか。日産は、首を切られた労働者にしっかり説明をする責任がある」と述べた。
●日産「すぐにコメントできない」
日産の広報担当は、1月29日夕の取材に「いろいろな案件があってすぐにコメントできません。明日以降にお返事することになります」と話した。
1月30日、日産広報より、「現在、中労委(中央労働委員会)への最新の申し立てをしており、具体的に何かこちらからコメントをすることは控えさせていただきます」とのコメントがあった。
※日産広報からの回答を受け、1月30日に記事の末尾を修正しました。