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今の著作権法で「漫画村の読者を逮捕することが可能」ってホント?
現在、記事のタイトルは変更されている

今の著作権法で「漫画村の読者を逮捕することが可能」ってホント?

「今の著作権法でも、漫画村でタダで読んでいる子供を逮捕するというのは、可能なんですよ」。5月15日掲載のニコニコニュースの記事で、有名プログラマーの小飼弾さんのこのような発言が取り上げられている。はたして本当に、漫画村の読者が逮捕されることはあるのだろうか。結論から言えば、現行の著作権法上、ありえない。

●記事のタイトルは変更されているが、該当部分は残っている

問題の記事は、4月23日のニコニコ生放送の番組で、小飼さんが発言した内容をとりあげたものだ。この番組では、いわゆる海賊版サイトの「漫画村」がテーマとなり、小飼さんはその対処法して「広告主に圧力をかけること」を提案しているが、出演した編集者の山路達也さんと次のようなやり取りをしている。該当部分を引用する。

「小飼:今の著作権法でも、漫画村でタダで読んでいる子供を逮捕するというのは、可能なんですよ。

山路:今の法律を適用するだけで?

小飼:はい。だから学校とかに教師のフリをした捜査員を入れて、休み時間とかにスマホで読んでいる子供がいたら、現行犯逮捕できちゃうんですよ。

山路:恐ろしいけど、それをやったらやったでまあ(笑)」

記事は、この部分にフォーカスを当てて、『「漫画村は利用者も逮捕可能」コンテンツ提供者だけじゃない?利用者にも問われる海賊版サイトの違法性』というタイトルで掲載されていた。5月17日現在、タイトルは変更されているが、該当部分は残っている。

http://news.nicovideo.jp/watch/nw3517615

●違法アップロードだと知りながら、「録音・録画ファイル」をダウンロードする場合、違法となる

著作権にくわしい高木啓成弁護士は「誤解の多いところですが、漫画村のような『海賊版サイト』で、タダでマンガを読んだり、ダウンロードしたとしても、逮捕されることはありません」と話す。

「著作権法上、ダウンロードは『複製』です。原則として、自分で楽しむために、マンガをダウンロードすることは、『私的複製』として認められている範囲内です。『違法』ですらありません。合法ダウンロードとなります(著作権法30条1項柱書)」(高木弁護士)

違法となるのは、どういうケースなのだろうか。

「法律が複雑なので、簡単に言いますと、違法となるのは次のような場合だけです。

(1)公衆の使用に供する目的で設置された自動複製機器による複製(30条1項1号)

(2)技術的保護手段(コピーコントロール)を回避して行う複製(同2号)

(3)違法アップロードされたデジタルの録音・録画ファイルを、違法だと知りながらダウンロードする場合(同3号)

上記1号〜3号の中で罰則があるのは、さらに限られています。それは、違法アップロードされた有償の(市販、または市販予定されているような)録音・録画ファイルを、違法アップロードだと知りながら、ダウンロードする場合です。ちなみに、映画の盗撮については、特別法で規制されています」

つまり、現行法では、マンガは、映像や音楽と違って、私的目的であればダウンロードすら違法でないのだ。さらに、違法にアップロードされた映像・音楽だとしても、ストリーミングで見ている・聞いている分は違法ですらない。まして、マンガについては、言うまでもないだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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