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2018年05月18日 06時28分

日大「悪質タックル」は「傷害罪が成立する可能性」 元アメフト部の弁護士が解説

日大「悪質タックル」は「傷害罪が成立する可能性」 元アメフト部の弁護士が解説
問題のシーン(関西学院大学アメリカンフットボール部提供)

日本大学アメリカンフットボール部の選手による悪質な反則が、波紋を投げかけている。5月6日、都内で行われた関西学院大との定期戦、DL(ディフェンスライン)の選手がパスを投げ終えて無防備な状態の関学大QB(クオーターバック)の選手に背後から強烈なタックルをして、右膝軟骨損傷、第2・第3腰椎棘間靱帯(きょくかんじんたい)損傷のケガを負わせた。

関学大は日大に抗議文を提出したものの、回答書では監督の指示はなかったとされ、真相解明を求め再回答を要求。日大アメフト部は5月17日、内田正人監督らが直接謝罪に出向く考えを示したが、騒動は簡単には収まりそうにない。高校・大学とアメフト部に所属し、現在もアマチュア選手として活動する間川清弁護士は今回の悪質な反則に対して「犯罪が成立する」と厳しい見解を口にする。(ジャーナリスト・松田隆)

●正当行為と認められるか

問題のシーンは関学大の攻撃の1プレー目。関学大QBがパスを投げ終わった後、背後から日大DLが全力でタックルした。映像ではパスを投げた約2秒後、付け狙うように走ってきた日大DLがタックルに行く様子を確認できる。

この反則をめぐっては、犯罪が成立する可能性があるかどうかが論点のひとつとなる。例えば、ボクシングは相手を殴打するものの暴行罪(刑法208条)に問われない。暴行罪と同じ行為をしていても、正当な業務(同35条)のため違法性がないからである。正当な業務(正当行為)と認められない場合には犯罪が成立することになる。

1991年には、他大学の日本拳法部の学生が、退部の意思を示していた部員に防具を着用させた上で顔面を殴打して死に至らしめた事件が発生。「スポーツの目的でルールを守り、相手の同意の範囲内」という判断基準に照らして正当行為を認めず傷害致死罪の成立が認められた。

さらに、内田監督の指示の有無も重要だ。日大は意図的な乱暴行為の実行を教えることはないとして、関学大への回答書で、「今回、指導者による指導と、選手の受け取り方の乖離が問題の本質」と明確に否定した。しかし関学大の鳥内秀晃監督は「選手の受け取り方が乖離していると思うのであれば、すぐに選手をベンチに戻し『そういうプレーをしろと言ったのではない』というのが、なぜできなかったのか」と5月17日の記者会見で怒りを露わにしている。

今回の法的な問題について、大学時代にWR(ワイドレシーバー)として活躍し、日大とも対戦したことがある間川弁護士とのやりとりは以下の通りだ。

●指示があったなら、監督にも傷害罪が成立する可能性

――今回の反則の映像を見て、どういう印象を持ちましたか

非常に悪質、あり得ないタックルという印象を持ちました。パスを投げ終わった後のQBへの接触はかなり重い反則です。止まれずにぶつかった場合でも取られますが、自分からタックルに行くことなど通常あり得ません。ディフェンスも重い反則と分かっているから、QBがボールを離したら、ぶつからないための訓練をしています。それが投げ終わったQBを追いかけて、2、3秒後にタックルというのが、明らかに故意があります。

――あのようなプレーを見たことがありますか

高校、大学、社会人とやってきて、NFLも見ていますが、あそこまで露骨なプレーは見たことがありません。

――あのようなタックルを受けた場合の衝撃はどのような感じでしょうか

タックルされて骨折したことがありますが、生身の体に大きな車がぶつかったような感じでした。選手たちの間で「今のは事故みたいだった」と言ったりします。関学大のQBはすごい衝撃だったと思います。両膝ついて、のけ反ってボーンってバウンドしていましたから。よくあれだけで済んだなと思います。背骨が折れてもおかしくありません。また、首に力を入れていないので頭がすごく振られており、頸椎もねんざや、折れる可能性があったように思います。

――犯罪が成立すると考えますか

明らかに正当行為の範ちゅうを逸脱した行為なので、違法性は阻却されないでしょう。腰の捻挫という傷害が発生し、実行行為としてタックルをして違法性阻却もされていないので、傷害罪(204条)が成立すると思います。

――日大は昔から、あのようなプレーが多かったのでしょうか

私たちのころは篠竹(幹夫)監督(故人)でしたが、当時の日大はダーティーなプレーはありませんでした。監督がご存命だったら、こんなことは起きなかったように思います。

――内田監督の指示の有無が取りざたされていますが

指示があれば共謀共同正犯が成立し、監督にも傷害罪が成立し得るでしょう。体育会の世界において監督の力は絶対です。真実は分かりませんが。

――悪質なファウルの後、内田監督は選手をベンチに下げませんでしたが、その不作為を法的にどのように評価されますか

そのプレーを容認しており、事前の共謀を推認させる間接証拠となりうるのではないでしょうか。

【取材協力弁護士】

間川清(まがわ・きよし)弁護士

1978年生まれ。中大附属高・中央大で体育会系アメリカンフットボール部に所属。25歳で司法試験合格後、勤務弁護士を経て現在はセントラル法律事務所を経営。社会人アメリカンフットボールチームに所属する傍ら労働事件、損害賠償事件、相続事件、離婚家事事件、刑事被告人弁護など、多数の弁護士業務に従事。 「ホンマでっかTV」「あさイチ」などテレビラジオ等のメディア出演も多い。著書に『うまい謝罪』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『気づかれずに相手を操る交渉の寝技』(WAVE出版)などがある。3月まで埼玉のクラブチームで現役選手としてプレーし、現在は香川でプレー先を探している。

【プロフィール】

松田隆(まつだ・たかし)

1961年、埼玉県生まれ。青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。主な作品に「奪われた旭日旗」(月刊Voice 2017年7月号)

ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/

(弁護士ドットコムニュース)

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