さまざまな理由で、予約していたホテルや旅館に、当日になってどうしても泊まれなくなることはありませんか? もしそれが当日だったら、キャンセル料金が100パーセントもかかってしまいます。とてももったいないですね。
世の中には、そんな「宿泊する権利」を売買できるウェブサービスがあります。たとえば、キャンセルしたい人と泊まりたい人をつなげる「Cansell」というサービスです。キャンセルしたい人は、キャンセル料が減り、泊まりたい人は通常よりも安い価格で泊まることができるというのです。
運営会社の社長は、NHK NEWS WEBで「宿泊の権利は債権にあたり、誰かに渡すことは法律上問題ないと確認できたので、キャンセル料の負担を軽減できるサービスができると思いついた」とコメントしています。
一方で、国内では、コンサートのチケットなどについて、チケット売買サイトが摘発されるなど、高額転売が社会問題になっています。ホテルや旅館などに宿泊する権利を売買することは本当に問題ないのでしょうか。正木健司弁護士に聞きました。
●「定価以下」で売買するのであれば、法的に問題ない
――「宿泊する権利」は債権なのでしょうか?
民法の「債権」とは、契約した相手に対して「代金を払ってください」や「物を引き渡してください」と、一定の利益の獲得を期待できる地位を言います。
「宿泊する権利」は、宿泊契約において、ホテルや旅館(債務者)から、宿泊するという利益を獲得することが期待できる宿泊予約者(債権者)の地位を言いますから、民法上の「債権」にあたります。
――売買して問題ないのでしょうか?
債権は売買できるので、「宿泊する権利」も他人に売買することができます。
しかし、予約したホテルや旅館が「宿泊する権利」を他人に売買することを禁止していることもあります。その場合、その権利を他人に売買しても、権利を譲り受けた人が宿泊できないなどトラブルが生じえます。
――チケット転売との違いはなんでしょうか?
コンサートのチケット転売は、転売目的や営利目的など、金儲けを目的とした売買だと、違法となる可能性があります。ただ、当日どうしても行けなくなった場合などで、定価で売買すること自体については、通常問題ありません。
「宿泊する権利」の売買においても、チケット転売と同様に、金儲けを目的として宿泊施設を予約して、定価より高額で他人に売買する場合、違法とされる可能性も十分に出てきます。ただし、定価以下で売買するのであれば、違法となることはないでしょう。