女子高生などが男性客を接客する「JKビジネス」を規制する条例が3月下旬、東京都議会で可決した。JKビジネスに特化した条例は、全国で初めて。18歳未満の就労を禁止し、営業する際には「届け出」を義務づける。7月に施行予定。
条例は、JKビジネスを「特定異性接客営業」と規定したうえで、客に添い寝やマッサージをする「リフレ」、一緒に歩いたり観光案内をする「お散歩」など、5形態に分類している。営業する際は、公安委員会への届け出を義務づけて、従業員の年齢を確認できるよう名簿を備えさせて、警察官が立ち入り検査できるようにした。違反すれば、最高で1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。
JKビジネスは児童買春などの温床だとして、警視庁が2012年から、労働基準法や風営法、児童福祉法などを適用して、違法な就労をさせている店舗を摘発してきた。また、2013年からは従業員の少女の補導もおこなってきたという。
今回の条例によって、JKビジネスを撲滅させることができるのだろうか。JKビジネスの問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●「風俗営業と同等の届出制を導入している」
「いわゆるJKビジネスについては、児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反など、いわゆる『福祉犯』の温床となっていることから、各地で規制が進んでいます。
2011年に神奈川県青少年保護育成条例で、リフレや撮影会など店舗型の個室で接客するものを規制したのが最初で、2015年に愛知県青少年保護育成条例で、リフレ・散歩・喫茶・見学クラブ・ガールズ居酒屋・ガールズバー・撮影・コミュニケーションルームという業態を定めて、青少年の稼働や立入を禁止しました。
今回の東京都条例は、これまでの規制とくらべると対象範囲も広く、規制内容も風俗営業と同等の届出制を導入している点で強力なものといえます」
奥村弁護士はこのように述べる。どのような規制がされるのだろうか。
「まず規制対象は、
(1)(店舗型・無店舗型)特定異性接客営業(リフレ・見学クラブ・ガールズバー・喫茶・散歩など)
(2)(店舗型・無店舗型)特定異性接客営業者(メイドカフェ等)
に二分されており、『青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの』という限定もあります。
また、『特定異性接客営業』には、青少年(18歳未満)が客に接する業務に従事していることを明示している場合だけでなく、青少年が客に接する業務に従事していることを連想させる場合も含むとされています。この点で、先行する愛知県・神奈川県よりも広範な規制になっています。
さらに、各業態については、次のような限定が付されています。
『青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、もしくは連想させるものとして、東京都公安委員会規則で定める文字、数字その他の記号、映像、写真もしくは絵を営業所の名称、広告もしくは宣伝に用いるもの、または青少年が客に接する業務に従事していることを明示し、もしくは連想させるものとして公安委員会規則で定める衣服を客に接する業務に従事する者が着用するもので、青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるものをいう』」
●児童買春などの温床がなくなると期待されるが・・・
では、規制内容はどうなっているのだろうか。
「特定異性接客営業について、
(ⅰ)届出制(ⅱ)設置禁止区域(学校・図書館・病院等の周囲200メートルの区域内)(ⅲ)禁止行為 (青少年稼働・青少年立入)(ⅳ)広告及び宣伝の規制(ⅴ)青少年に対する勧誘行為等の禁止
特定衣類着用飲食店営業については、
(一)禁止行為 (青少年稼働・青少年立入)(二)青少年に対する勧誘行為等の禁止
が定められています。つまり、特定異性接客営業については、風営法と同等の規制となっています」
今回の条例は効果が見込めるのだろうか。
「条例の施行後は、対象業態について『JK』をうたう店舗から、青少年がまったくいなくなりますので、福祉犯(児童買春罪・青少年条例違反)の温床という弊害がなくなることが期待されます。
もっとも、青少年側と客側のニーズは強く、現時点での実態調査に応じて、対象業態を限定しているため、新たな業態が生み出されたり、都外に本拠地を置いて都内に向けて派遣する無店舗型が規制できなかったり、JKを明示・連想させる表示をしなければ規制されないなどの点で、規制が潜脱されるおそれもあります。
他方で、『青少年に関する性的好奇心をそそるおそれがあるもの』という抽象的な要件があるので、拡大解釈されたり、萎縮効果を生むおそれもあります」