管理していた高齢者の預金を使い込むなど、後見人に選任された弁護士の不祥事が後を絶たない。こうした中、日本弁護士連合会(日弁連)は3月29日、弁護士後見人の不祥事防止と早期対策への取り組みを全国52の弁護士会に要請したことを発表した(要請は14日付け)。
成年後見制度は、認知症などの人に代わって、財産など本人の権利を適切に管理しようとする仕組み。親族が任されることもあるが、弁護士などの専門家が選任されることも少なくない。最高裁の調査結果(2015年)では、後見開始の申し立て2万7521件のうち、8000件で弁護士が後見人として選任されている。
日弁連は、2014年にも同様の取り組みを全国の弁護士会に要請していたが、いまだに選任された弁護士による不祥事が発生し「市民の信頼を損なう事態となっている」として、改めて要請する。1年程度をかけて取り組んでもらい、各弁護士会の先進的な取り組みについて全国的に共有する。
具体的には、「質が担保された推薦名簿の整備」「弁護士会による(不祥事の)早期発見、早期対応のための体制の整備」など、2014年に要請した5つの項目を改めて要請する。この他にも、後見人として活動する場合の行動指針となるガイドラインの作成や、家庭裁判所との連携強化を求める。
日弁連高齢者・障害者権利支援センター副センター長の平山秀生弁護士は、29日に東京・霞が関の弁護士会館で行われた会見で、「判断能力に困難をかかえ、自ら声をあげることができない被後見人の財産を侵害することは絶対に許されない。被後見人の権利を擁護し、市民の信頼を得るため、不祥事根絶を目指して組織的に対処していく」と述べていた。