『秒速5センチメートル』などの劇場版アニメを手がけた新海誠監督の最新作『君の名は。』。8月26日の公開から4週連続で観客動員ランキング首位を獲得するなど、大ヒットを記録している。ところが、そんなの人気に便乗して、公式から許諾を得ていない「偽グッズ」や「偽サイン」が世に出回っているようだ。
新海誠作品PRスタッフの公式ツイッターアカウントは9月20日、「たいへん残念なことに便乗した偽物のサインや、公式からの許諾を得ていない違法グッズなども出回ってきているようです。皆様、どうか騙されませんようご注意下さい」と呼びかけた。
ネットオークションには、新海監督の偽サインとイラストの入った色紙も出品されていたという。ツイッターのユーザーから「これは本物ですか?」と問われて、新海監督本人は「偽物です」とこたえている。現在、その偽サインの出品は取り消されている。
こうした偽グッズや偽サインを売ることは、どんな罪に問われるのだろうか。知的財産にくわしい齋藤理央弁護士に聞いた。
●著作権法、商標法、不正競争防止法などで違法行為となる
「偽サインや偽グッズにキャラクターのイラストなど著作物が転用されていた場合、著作権を侵害することになります。
この場合、そもそも偽グッズを作ること自体違法(複製権侵害)にあたりますし、販売する行為も当然禁止されます(頒布権、譲渡権侵害)。
また、そもそも偽グッズと知っていながら、偽グッズを売りに出すことも違法行為とみなされます(著作権法113条1項2号)。
麻薬など違法薬物は所持いるだけで違法というイメージは持ちやすいかもしれませんが、偽グッズについても、偽グッズだと知って売る気があれば、所持するだけで違法になってしまいます(著作権法113条1項2号)」
アニメに関するロゴなどが、権利者によって商標登録などがされている場合はどうなるのだろうか。
「商標登録されたロゴを偽グッズに使用しているときは、商標法違反の問題が生じます。
同じく、権利者がグッズデザインを意匠登録していた場合、意匠登録されたグッズデザインを模倣した偽グッズを売れば、意匠法違反の問題が生じます。
仮に、商標登録や意匠登録されていなくとも、権利者が使用しているロゴを転用していたり、権利者が販売しているグッズを模倣した偽グッズを販売した場合、不正競争防止法違反の問題が生じることになります。
このように、偽グッズの販売は知的財産権法違反の典型的なケースの1つですから、さまざまな知的財産権法制によって幾重にもかさなって禁止されることになります」
●偽サインは「詐欺罪」で処罰される可能性がある
偽グッズを販売した場合、一般的には、著作権法違反などで処罰される可能性があるようだ。「偽サイン」を販売した場合はどうなのだろうか。
「偽サインは、知的財産権的価値というよりも、監督本人が書いたという『レア感』を偽る行為ですから、知的財産権法の守備範囲をこえて、『詐欺罪』で処罰される可能性もあります。
このように、軽い気持ちで偽サインや偽グッズを売ったりすると、思った以上の法的制裁を受ける可能性があります」
齋藤弁護士はこのように注意喚起していた。