高校生がローションとみられる液体を商業ビルの階段にまき、足を滑らせた40代の女性が転倒して腕の骨を折る重症を負った。
読売新聞の報道によると、高校1年生の男子生徒3人は6月4日夜、横浜市の商業ビルのエスカレーター降り口や外階段に液体をまき、通行人が足を滑らせる様子を見て楽しんでいたという。女性が骨折した際に慌てて立ち去ろうとする3人に警備員が声をかけたことで発覚した。
3人は「いたずら半分にやってしまった」と話しているが、商業ビルに滑りやすい液体をまくことはどのような罪に問われる可能性があるのか。また、けが人が出なかった場合でも、法的な問題はないのか。坂野真一弁護士に聞いた。
●けがをさせたら、傷害罪に該当する可能性
「けが人が出れば傷害罪に問われる可能性があります。
階段やエスカレーター降り口のような場所に滑りやすい液体を散布すれば、足を滑らせる人が出てくる可能性が高いことは容易に分かります。また、足を滑らせた人が転倒する危険も十分ある中で、それでも良いと思って散布をしていると考えられますから、けが人が出た場合は人の生理機能を侵害したとして傷害罪に該当する可能性があります。
ただ、通行人が足を滑らせただけで、けがをしなかった場合には、通行人の身体に対する有形力の行使はないので、暴行罪は成立しないと思われます」
●建造物侵入罪、器物損壊罪、業務妨害罪、軽犯罪法違反が成立する可能性も
商業ビルとの関係で問題はないのだろうか。
「商業ビルの所有者(看守者)は、いたずら目的で商業ビルに立ち入ることを許諾するとは思えませんから、建造物侵入罪の成立可能性も否定できません。
また、どの程度の散布なのか、どのような種類の液体の散布なのか不明なので、はっきりとしたことは言えませんが、けが人が出なくても、ローションを散布することで、散布を受けた物の本来の効用(今回の場合、階段やエスカレーターの本来の機能)を失わせている場合は器物損壊罪に該当する可能性もあります。
さらに、商業ビルの業務を妨害するおそれが生じることは当然分かっていたでしょうから、偽計によるものか威力によるものかの区別が微妙ですが、業務妨害罪も成立する可能性があります。業務妨害罪の規定には『業務を妨害した者は』と書かれていて、実際に業務を妨害した結果が必要であるかのように読めますが、判例では『業務を妨害するに足る行為』があれば成立するとされていますので、注意が必要です。
さらに、業務妨害罪まで該当しないとしても、他人の業務をいたずらなどで妨害したといえますから軽犯罪法違反(1条31項)にも該当すると思われます。
悪戯半分とは言え、高校生にもなれば自らの行為の結果を十分予測できると思います。ほんの少しだけでも自らの行為について考えて行動して頂ければ良かったと感じます」
坂野弁護士はこのように話していた。