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パワハラやモラハラ…映像業界の過酷な労働環境の背景に「長時間労働」、NPOの調査で浮き彫りに
厚労書で会見する「映画業界で働く女性を守る会」と菅俊治弁護士(右端)

パワハラやモラハラ…映像業界の過酷な労働環境の背景に「長時間労働」、NPOの調査で浮き彫りに

映画やドラマなど映像業界の労働環境の改善を求めて活動してるNPOが、業界を離職した人を対象としたアンケート調査の報告を11月4日、発表した。

報告によると、10年以内に離職した人は7割となり、その理由として「長時間労働」や「パワハラ・モラハラ」「妊娠・出産、育児のため」などが挙げられ、過酷な労働環境が浮き彫りとなった。

この報告をふまえ、NPOは11月4日、厚労省に対して労働環境の改善を求める要望書を提出した。

●「徹夜での撮影に耐えられず途中で倒れてしまい…」

報告をまとめたのは、NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」(swfi)で、今年5月に年代や性別に関係なく、映像業界を離職した人、あるいは何らかの理由で1年以上のブランクを経て復帰した人を対象に調査した。

報告によると、回答したのは118人で、女性が73.7%、男性が25.4%、「それ以外・回答せず」が0.8%で、女性が多数を占めた。やめた時の年代は、20代が最も多く56.8%、次いで30代が32.2%と若い年代が目立った。

職種は「制作・映像デスク」や、「助監督・AD」などが多く、「意思決定を行う立場だったか?」という問いに対して、「はい」と回答した人は13.6%で、「いいえ」という回答が57.6%と大半を占めた。

働いた年数は、「5〜10年以内」が25.4%と最も多く、次いで「1〜3年以内」が24.6%、「3〜5年以内」が20.3%で、10年以内にやめた人は7割と多数だった。

なぜやめたか、その理由について最も強かったものを聞いたところ、「パワハラ・モラハラ」が14件、次いで「長時間労働・休みがない」が13件、「病気・体調不良・心身不調(労働環境によるもの)」が12件だった。

一方、「妊娠・出産」が10件、「育児のため」が10件で、これらを合わせると理由としては最多となり、特に若い世代の女性にとっての働きづらさが浮き彫りになった。

また、「やめた原因について誰かに相談したか」という問いに対して、「しなかった」と回答した人は43.2%で、相談する専門家や機関にまでたどりついていないことが伺えた。

他にも、次のような声が寄せられた(報告から一部を抜粋する)

「新しいモノを提供していると世の中では考えられているマスコミ業界には古臭い考え方の人が多く、男尊女卑の塊」

「徹夜での撮影に耐えられず途中で倒れてしまい断念しました」

「若い時にしかできないお仕事だと感じました」

「ハラスメントに耐えた人、またハラスメントをしている人しか生き残れないように思う」

「朝4時局入りなど、非常識な時間から子供の預け先を利用したい形になるため、働きにくい」

●映像業界に新人が入ってこない背景にある「労働環境」

swfiではこうした結果をふまえて、「長時間労働・低賃金について調査を行い、映像制作現場で働く人に対して保護を与える制度を設ける」「持続的に働けるよう、相談窓口や監査機関の設置」などを求める要望書を厚労省に提出した。

同日、swfiは厚労省記者クラブで会見した。

調査を行った背景として、swfi代表のSAORIさんは次のように説明した。

「昨今の映像業界では、新人が入ってこない、すぐやめてしまうなどの人手不足が問題となっています。やめる選択をせざるを得なかった人がどんな理由でやめていったのかを考えることで、見えてくるのではないかと考えました」

また、ハラスメントが横行している背景に長時間労働があるとして、妊娠出産育児をしている女性に限らず、すべての人たちが働きやすい労働環境の必要性を訴えた。

swfiのアドバイザーであり、日本労働弁護団でスポーツ芸能界の労働問題に取り組む菅俊治弁護士も会見に参加。「文化芸術、特に映画産業は最も権利が守られてない職場のひとつ。そういう産業で働く方々の環境が守られる社会になれば、日本の働き方改革が進むと思っています」と述べた。

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