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2020年06月11日 09時23分

他人の投稿「リツイート」で、法的責任を問われる? 中澤佑一弁護士に聞いてみた

他人の投稿「リツイート」で、法的責任を問われる? 中澤佑一弁護士に聞いてみた
気軽にリツイートしている人も多いと思いますが…(C-geo / PIXTA)

ツイッターで名誉毀損に当たるツイートをリツイートしただけで、損害賠償責任を負うことになるのかーー。ツイッターの使い方に大きな影響を与えそうな論点を含んだ裁判が始まりました。

ジャーナリスト伊藤詩織さんが6月8日、ツイッターで虚偽の内容を投稿されたとして、漫画家のはすみとしこさんらを提訴しました。問題となっているはすみさんの投稿の一部をリツイートした男性2人も訴えています。2人はそれぞれ約1500人、約5000人ほどフォロワーがいたそうです。

提訴を報じる記事に対し、ツイッターでは「前後にコメントを残さないと、賛同と認定されるのか」「自分も気を付けよう」「リツイートは必ずしも賛同ではない」など、リツイートの法的責任に注目したコメントが複数ありました。

他人の発言をリツイートすることで、自分の発言と同様に扱われ、名誉毀損が認められるのか。過去の裁判では、どのような判断がされてきたのか。

3つの裁判例を紹介したうえで、ネットの権利侵害問題にくわしい中澤佑一弁護士に見解を聞きました。

●「リツイートした人の発言行為」「主体的な表現行為」

平成26年12月24日の東京地裁判決は、「ポスター破りに唾かけ、車破壊、名誉毀損、業務妨害、証拠隠滅・犯人隠避、ストーカー、強姦、強制猥褻、不正アクセス、詐欺、恐喝、集団暴行、飲酒運転etc…お前らはこんだけやらかしてるんだから、無傷でいられるわけないでしょ」などという他人の投稿をリツイートしたことが、法的問題に当たるかどうかが争点となりました。

裁判所は、まず、このツイート自体について、多数の犯罪をしたことなどを示していて、侮辱し社会的評価を低下させるため、名誉毀損に当たると判断しました。

リツイートした人の「自身が発信したものではない」という反論に対し、裁判所は、リツイートについて「ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で、自身の発言と同様に扱われるものであり、リツイートした人の発言行為とみるべき」と示しました。

また、平成27年11月25日の東京地裁判決は、リツイートについて「既存の文章を引用形式により発信する主体的な表現行為としての性質を有するといえる」とした上で、「本件ツイート等の名誉毀損性の有無を判断するに際しては、リツイートに係る部分をも判断対象に含めるのが相当」と示しました。

●「賛同する意思を示して行う表現行為」

令和元年9月12日の大阪地裁判決は、ジャーナリストの岩上安身さんが、大阪府知事時代の橋下徹さんについて書かれた「20歳以上年上の大阪府の幹部たちに随分と生意気な口をきき、自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」といった他人の投稿をリツイートしたことが、名誉毀損に当たるかどうかが争点となりました。

なお、岩上さんは、橋下さんの提訴時までにリツイートを取り消しています。

橋下さん側の主張

原告の橋下さん側は、「リツイートであっても、そのまま自身のアカウントで投稿する時点で自身の発言と同様に扱われ、当然に被告の発言行為とみなされるというべき」と指摘。

「一般の閲読者は、被告が、相応の取材をした上で、元ツイートを原文ママの状態で閲読してもらいたいと考えて投稿をしたと受け取るものと考えられる」として、今回のリツイートは岩上さん自身の発言として扱われるべきと主張しました。

岩上さん側の主張

一方、被告の岩上さんは、リツイートは自分の意見を発信する以外に、第三者の投稿内容を紹介して拡散することも含まれると指摘。

拡散の目的には「元ツイートの内容に賛同する意思表示の場合もあれば、内容に批判的であるからこそ紹介する場合、リツイートをした者の単なる備忘録的な目的の場合など、様々な場合がある」とし、「情報提供の趣旨でリツイートしたに過ぎないから投稿の行為主体とみることはできない」と反論しました。

裁判所の判断

裁判所は、元ツイートを批判したり議論を喚起する目的でリツイートする場合、「何もコメントをつけないで元ツイートをそのまま引用することは考え難く、投稿者の立場が元ツイートの投稿者とは異なることなどを明らかにするべく、当該元ツイートに対する批判的ないし中立的なコメントを付すことが通常である」と指摘しました。

その上で、コメントをつけずに引用するリツイートは、一般の閲読者の読み方を基準とすれば、前後のツイート内容からリツイートの意図が読み取れる場合などをのぞいて、「リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対し、当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当」と示しました。

今回の岩上さんのリツイートについても、「元ツイートの内容に賛同する旨の意思を示す表現行為としての被告自身の発言ないし意見でもあると解するのが相当」として、内容について責任を負うべきと結論づけました(岩上さんが控訴)。

●現状は「ケースバイケースの判断」

このように、過去の裁判では、リツイートについて「投稿主の発言行為」「主体的な表現行為」「賛同する意思を示して行う表現行為」と判断されています。

これら3つの裁判例を元に、伊藤さん側は訴状で「投稿者がリツイートした意図が理解できるような特段の事情が認められない限り、リツイートの投稿者がフォロワーに対し、ツイートの内容に賛同する意思を示しておこなう表現行為と解釈するのが相当」と主張しています。

また、被告の一人の男性については、伊藤さんを揶揄する他のツイートについても「いいね」をしていることから、「賛同する意思を示しておこなう表現行為としての男性自身の発言ないし意見であるとも解すべき」と指摘しています。

リツイートの法的責任について、どのように考えれば良いのでしょうか。

中澤弁護士は「裁判所の考え方も定まった部分がない領域で、ケースバイケースの判断になっているのが現状です。私個人の見解としても、リツイートだからセーフ、リツイートでも違法ということではなく、リツイートか否かは、法的判断に決定的な影響を与える要素ではないと考えています」と話します。

「リツイートは『他人のツイートをリツイートボタンを用いて自身のタイムライン上でも紹介する』という行為で、これ自体はニュートラルな行為です。他人のツイートを用いた自身の表現として行う場合もあるでしょうし、他人のツイートに対する反対を表明する場合もあるでしょう

リツイート対象のツイートの内容を基礎に、前後のタイムラインの流れなども加味して、これをリツイートすることはどういう意味かということを外形的に判断してゆくべきだと思います。

対象となるリツイート元の内容によっては、単なるリツイートだけでも、元のツイートをした人と同様の責任を負う場合もあるでしょうし、単にリツイートしただけでは足りず、その後の自身のツイートでの積極的な言及まであって初めて責任が発生する場合もあるでしょう」

裁判所がどのように判断するか、注目が集まっています。

取材協力弁護士

中澤 佑一弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。
事務所URL:http://todasogo.jp

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