2020年03月30日 11時29分

ロンドン「ロックダウン」現地ルポ…不便な暮らし、どう乗り越える? キッズはオンライン授業を満喫 

ロンドン「ロックダウン」現地ルポ…不便な暮らし、どう乗り越える? キッズはオンライン授業を満喫 
ビートルズのアルバムジャケットで有名なAbbey Road。普段は渋滞しているが。(渋谷エマさん提供)

新型コロナの感染拡大が進む中、東京のロックダウンも現実味を帯びてきた。前代未聞の措置だけに、都市封鎖後の一般市民の暮らしぶりは想像できない。先週23日よりロックダウンが実施された英国では、どんな暮らしとなっているのか。

ロンドン郊外在住のライター・渋谷エマさんによれば、不用な外出には罰金も科される厳格な運用だが、日本以上にオンライン会議やレッスンが浸透しており、日常生活にも今しかできない楽しみを見出すようにしているという。

渋谷さんの話からは、隣近所や友人とのコミュニケーションの重要性、子どもと親の精神安定に必要なことなど学ぶことは多くありそうだ。渋谷さんにロンドンのロックダウンルポを寄稿してもらった。

●突然のロックダウン

突然のロックダウン指示だった。3月18日、20日より公立の小中学校を休校するようにとの指示がくだされた3日後の23日夜、ボリス・ジョンソン首相は「You must stay at home」と、ロックダウンの指示をしたのだ。

画像タイトル ビートルズのアルバムジャケットで有名なAbbey Road。普段は渋滞しているが、ご覧の通り、ガラガラだ。

現在、夫の転勤によりロンドンに駐在して3年目となる。もともと私自身はフリーランスとして働いており、出勤はないが、日系企業に勤務する夫は、これを受けて23日よりホームオフィス(在宅勤務)となった。

慌ただしくなった大人とは対照的に、8才の長女(公立現地校3年生)、3歳の次女(現地幼稚園最終学年)は学校や幼稚園が休みとなり、親と一緒に過ごせることを無邪気に喜んでいるようだった。

●違反を繰り返すと罰金、認められた外出も

イギリスのロックダウンは罰金が科される厳しいものだ。不要にもかかわらず外出すれば、罰金は60ポンド(約7800円)以上。2回目の違反に対してはは120ポンド(約15,600円)が科される。

ただし、食料品の買い出し、1日1回の散歩は認められている。と言っても、外出ルールはかなり細かく制限されており、極めて不便であることは間違いない。

画像タイトル Bakers Street Stationの駅前のMarylebone Road 普段ロンドンでもっとも混んでいる道の一つ

●買い物「2メートルのソーシャル・ディスタンス」

イギリスでは元々、多くの家庭が宅配スーパーを利用している。しかし現在は、どこも配達枠は数週間先までいっぱい。予約自体が難しいのだ。つまり、これだけ”Stay at Home"、自宅にいるように言われながらも、スーパーへ出向く場合もある。

スーパーも厳戒態勢だ。

3月25日に政府が発表した方針に基づき、店内へ一度に入れる人数を制限し、行列を減らすなどのルールは徹底されている。また、ほかの客と2メートルの距離をあける「ソーシャル・ディスタンス」も厳守されている。

画像タイトル 意外と整然としている

また、高齢者や障害のある人、医療スタッフの優遇も実施されている。

営業時間の短縮、1製品に3つまでの購入制限、高い需要のある製品のラインアンップの縮小のほか、NHS(国民保健サービス)スタッフ限定の入店時間(開店前の1時間など)、高齢者や障害のある人の優先入店時間を設定しているのだ。

実際、我が家が利用していた宅配スーパーのデリバリーは社会的弱者(高齢者や医療ケアの必要な人など)のみへの提供となり、あらかじめオンラインで頼んでお店にとりにいくClick&Collectというサービスも予約すらできない。

最後に宅配スーパーのデリバリーが利用できた時には、お隣の70代のご夫婦にも聞いて、一緒にオーダーした。同居家族以外は会ってはいけないので、玄関において、ピンポンして失礼した。

画像タイトル ご近所同士で支え合っている

一方で店頭には商品が戻ってきているように見受けられる。一時は店頭から消えたトイレットペーパーも店頭にも並んでいるし、数週間前のような棚がすっからかんという状態ではない。

ちなみに日本人が予防にかかさないマスクは、こちらには並んでいない。元々、マスクは予防のためではなく、つけている人が病気だからと解釈されていた。だから、マスクをつけると異様な眼でみられるし、予防に効果がないという声もあった。ただ、ロックダウン前後からちらほら見かけるようになった。

香港人の友人がマスクを届けてくれたけど、直接近くで会うことはできないので、1階から2階の窓になげてくれた。こんな事態になって、友人たちには助けられることばかりだ。とても嬉しい。

また、ロックダウンを受け、徐々に新しいサービスも生まれている。

レストラン向けに食材を販売していた事業者が個人向けの宅配を始めたり、大型スーパーのような品揃えや時間を選べるなどのオプションはないものの個人商店やカフェが宅配を開始している。商品数や配達時間に制限はあるけれど、基本的な生活、食事に必要なものを調達するのに、従来よりは少ないが徐々に選択肢が増えてきた。

●子どもたちの暮らしぶりは?

大人は状況を理解できるから、多少の不便は仕方がない。ただ、問題は子どもだ。

我が家の子ども達は近くの学校で感染者が出たために、政府方針の20日より前の18日より自主的に通学を停止した。

私立校ではリモートでのオンライン授業を行なっているところが多いようだが(イギリスの春学期は4月上旬まで)、娘の通う地元の公立校は、オンラインの授業はない。今は、月曜までにクラウド上に1週間分の課題(英語、算数、コンピューティング、テーマなど)がアップロードされるので、それをダウンロードして自分で学習する仕組みだ。

ただ、新たなトピックを学ぶような課題ではなく、これまで習ったことを復習するような内容。1週間もかからず2時間程度で終わってしまう量。出る課題の量は学校や学年によっても異なるようだ。

●1日のスケジュールは?(3歳)

子どもたちがどんな暮らしをしているか紹介したい。

まずは3歳の次女から。

午前9時。幼稚園のサークルタイム(30分)をビデオ通話の「zoom」で始まる。みんなでその日の日付やお天気を確認したり、歌を歌ったり、絵本を読んだり、簡単な運動をする時間だ。参加するのは教師4、5人と生徒30人程度。それに加えて親やシッターがそれぞれ自宅から参加する。

画像タイトル 絵本の読み聞かせもオンラインで問題ない

幼稚園と同じ時間、同じ内容なので、娘も張り切って参加していた。でも3月27日が学期最終日だったので来週からはもうない。これからいつまで続くかわからない休校をどう乗り切るかが課題だ。

サークルタイムのあとは、幼稚園が送ってくれたワークをしたり、塗り絵をしたり、Youtubeの子ども向けヨガや運動をして過ごす。あとは、3歳児がやりそうなこと。タオル引っ張りだしたり、洋服の着替えを続けてみたりーー。

長女と違って次女は状況がわかっていない。当然のことだが、毎日「公園に行こう」と言われる。公園は開いてはいるが、遊具がおいてあるプレイグラウンドは閉鎖されて立ち入り禁止となっている。このあたり、3歳に理解を求めるのは難しいだろうと思う。

画像タイトル 幼稚園から送られてくる課題に取り組む

●オンラインを活用する8歳長女

8歳の長女も、午前9時から16時まで、基本的には学校と同じサイクルで生活している。1日のスケジュールは決まってないけれど、算数や日本語の勉強、運動、音楽などを飽きないように続けている。

何しろ、オンラインの教材やコースがたくさんあり、ロックダウン前後から無料で受けられるものが増えたので、選択肢は多い。多すぎて迷うほどだ。

娘は学校のオススメのKhan Academy(https://www.khanacademy.org/)(日本語版もある)を算数の学習に使っている。これは本当に素晴らしい。無料にもかかわらず、テーマごとに細かくビデオ講義と問題がある。

英語は勉強のかわりに、読書。家にある本は全て読んでしまったし、図書館は閉まってしまった。近所の人に頼んでみたところ、中学生のお嬢さんが昔読んでいた本を玄関先に届けておいてくれた。

●ストレス解消の運動、ママも夢中に

2人とも外出を制限され、ストレスが溜まっているようだ。そんな時は、何より運動。

イギリスの人気トレーナーJoe Wicks(https://www.youtube.com/channel/UCAxW1XT0iEJo0TYlRfn6rYQ)がロックダウン後から平日の毎朝9時に子ども向けのPE(体育)のライブ配信を行なっている。うちでもライブではないけれど視聴して運動している。ルーティンづくりにいいので、ライブでみている友達も多い。

子どもからするとツボな動きもあるらしく、爆笑しながら運動している。500万人位視聴しているらしい。イケメンだからかママにも人気。

画像タイトル 身体を動かしたい!

他にもセレブリティや著名な学者やプレゼンターがライブ配信で教育的なコンテンツをFacebookやYouTubeで配信していてる。運動以外にも、野生動物、科学、算数、ダンス、お話など幅広い。子どもたちも夢中になっているようだ。

●習い事もオンラインで

習い事もオンラインで継続している。

ピアノやバレエのレッスンは通えなくなってしまったけれど、zoomやskypeで繋いで継続している。娘も大好きな先生にあえて嬉しそうだ。

画像タイトル 自宅でレッスン

娘の友人が通う音楽やバレエの教室もそれぞれオンラインでレッスンを続けているところが多い様子だ。ちなみに、English National BalletはFacebookでレッスンを公開してくれているし、別の有名なダンスカンパニーもInstagramでライブ配信するなど、こんな時にしかできないオンラインレッスンは非常に充実している。

長女にとっては友達に会えないのがなにより残念。でも、学校のメールアドレス(学校内にしか送れない)を使って友達とメールをしたり、FaceTimeで時間を決めて話したりしている。

16時以降はいつもと同じように自由時間。おやつを作ったり、犬の散歩に行ったり、読書をしたりーー。習い事にいく時間がなくなったので、いつもに比べるとゆったりと過ごせるようになった。

●同居家族以外と「2メートル以上、離れないといけない」

ただ、感染者が毎日加速度的に増えているため、ロックダウンから1週後には、当初習慣にしていた1日1度の外出は2日に1度程度に減らした。ちなみに同居家族以外とは2メートル以上離れないといけないので、散歩する時には、人とすれ違う前に道を何度も渡る必要がある。

画像タイトル 公園でも2メートル以上離れる

友人はインドからご両親が来るのを楽しみにしていたが、到着して10日後にロックダウンとなり、高齢の両親を心配しアパートからは全く出ていない。

彼女の娘さんが作って窓に貼っているサイン「Please Stay at Home」。イギリスでは子ども達がレインボーマークとともに窓やドアに貼っている家も多い。

画像タイトル 子どもたちが作る「Please Stay at Home」

●校長先生から「スーパーヒーローになろうとしない」

ロックダウンや休校は今後も長くなる可能性がある。

休校になった頃、「予測不能な非常事態であり、計画されていた休校でもないのだから、親も頑張りすぎないように」と、校長先生からメールがあった。どの親にとっても、休校期間中の子どもの学力や生活について不安も大きいと思う。

校長先生はこれを見越していたのだと思う。「学校に通っているかのように勉強させたりすることは、Primary Aged Children初等教育(4-11才)の子には無理。親が働きながら、教師のようになろうとしないこと。スーパーヒーローにならないように」と書いてあった。

この言葉を読んで「心が軽くなった」と言っていた親は多い。個人的な印象だが、休校やロックダウンが決まったときに、少なからずみんなパニックになったとは思うが、決定に対して批判的な親は少なかったと思う。

もちろんほとんどの親が在宅で仕事している中で子どもの面倒をみるのは大変だし、実際クラスメートの親のWhatsAppでは、「不安もあるし、仕事が進まない」「子どもがiPadばかりみている」などの愚痴もある。でも、イタリアに家族や友人がいる人も多いイギリスだからか、危機感が急激に高まっているのを感じる。

政府からはロックダウンが正式にいつまで続くかの発表はもちろんないけれど、多くの親が子どもたちは新年度(9月)まで学校に戻れることはないと考えているように思う。

●「先のことはあまり考えない」「頑張り過ぎない」

ロックダウンが始まって、親としての心配は子どもの精神状態だった。まず最初の1週間を過ごして思ったことは、頑張りすぎないことの大切さ。これからどのくらい続くかわからないのだから、それから先のことはあまり考えないようにしている。9月まで自宅退避とか辛すぎる。

私自身が寂しく思うのは、近所の人との何気ない挨拶だったり、友達との会話だったりがなくなったこと。

その分、夜に友達と何人かでオンラインで話したり、クラスの親のグループでWhatsAppしたり。大変な状況でもユーモアを見つけようとするのはイギリス人の素敵なところだと思うのだが、ロックダウンに関する面白い動画がたくさん出ていて1日1回は爆笑している。

少しポジティブなことを言えば、家族の時間が増えたことだ。

今まで学校や習い事の送り迎えと仕事で慌ただしく生活していたが、今はもっと子どもと会話をする時間もあるし、一緒にご飯を作ったり、工作をしたりできる。夫は在宅勤務でもほとんど部屋にこもって会議だが、通勤時間が減った分、少なくとも2食は一緒に食べることができるし、子どもも嬉しそうだ。

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  • 公園での散歩も「ソーシャル・ディスタンス」を守って

  • ビートルズのアルバムジャケットで有名なAbbey Road。普段は渋滞しているが、ご覧の通り、ガラガラだ。

  • Abbey Road

  • Bakers Street Stationの駅前のMarylebone Road 普段ロンドンでもっとも混んでいる道の一つ