近年、高齢者による交通事故が社会問題化しつつあります。
一般的には、高齢化に伴い、判断力や認知機能が低下するとされています。高齢運転者によるブレーキ・アクセルの踏み間違い事故や、高速道路における逆走による事故・トラブルが発生すると、マスコミで大々的に取り上げられるケースが散見されるようになってきました。
内閣府によると、75歳以上の運転者による死亡事故の発生割合は、75歳未満の群と比較して、2倍以上となっています。
現在、自動車運転免許の自主返納制度はありますが、産経新聞は今年1月、高齢者について、「認知症に限らない運転技能検査の義務付けと強制返納の仕組み作りが急務」と主張する記事をインターネット上などに掲載しました。
今回、弁護士ドットコムに登録する弁護士に、高齢者に対して、何らかの形で自動車の運転免許の強制返納の仕組みが必要かどうかを聞いた。
●必要性への見解、割れる
****以下の2つの選択肢から回答を求めたところ、10人の弁護士から回答が寄せられました。
(1)強制返納の仕組みが必要→6票
(2)強制返納の仕組みは不要、もしくは問題がある→4票
「仕組みが必要」とした弁護士からは、「(身体能力のテストを義務付け)基準を下回ったり、検査を受けなかった場合、免許証の返納を義務付けるという仕組みであれば、不公平感がない」「アルコールやタバコは年齢によって強制的に一律に禁止している」との指摘がありました。
「仕組み不要・問題あり」とした弁護士からは、強制返納制度について「高齢者の運転を完全に防ぐことができるのか疑問」といった声がありました。また、「『高齢者』だから事故率が高いのではなく、『若年者』も事故率は高い」として、高齢者のみへの対応を疑問視する意見もありました。
●編集後記
高齢者の交通事故が社会的に大きく取り上げられるようになって久しいですが、強制返納については賛成と反対の意見が割れる結果となりました。
事故防止は、高齢者本人の幸福につながる側面は理解できますが、現在でも公共交通期間がない地域で暮らす人々も一定数います。そのような自治体においては、公共交通の充実といっても、予算などの問題から、すぐに対応できない事情も多そうです。
「事故の減少」と「移動の自由」をうまく両立できるように、議論が深まることを願うばかりです。