刑事裁判のやり直し「再審」制度を見直す法改正をめぐり、自民党部会の事前審査への対応に関する公文書を法務省が廃棄していたことが、東京新聞の情報公開請求による報道で明らかになった。
弁護士ドットコムニュースも、今年4月にほぼ同様の内容で開示請求していた。しかし、その際の不開示理由は「作成、取得しておらず、保有していない」だった。
東京新聞の報道後に法務省へ確認すると、「本来は『廃棄済みで保有していない』と記載すべきところを誤った」と説明した。時系列で追うと、新たな疑問も浮かび上がる。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●法案を審査、自民党の会議は3〜5月に計11回
再審制度の法改正をめぐっては、今年2月、法務大臣の諮問機関「法制審議会」が見直し案をまとめ、それに沿って政府が法案を作成した。
その後、自民党の法務部会と司法制度調査会の合同会議で政府案に関する審議が始まり、報道によると、3月下旬から5月13日に法案が了承されるまで計11回開かれたという。
政府案には冤罪被害者らから「改悪だ」と批判が噴出。法務省に対して、自民党内部からも大幅な修正を求める声が相次ぎ、政府は3回にわたって法案を修正した。
●4月10日に開示請求→5月13日に「作成していない」
こうした中、弁護士ドットコムニュースは4月10日、法務省に対し、次の内容で行政文書の開示を請求した。
再審制度に関する刑事訴訟法改正案について、法務省が2024年以降に自民党の国会議員へのロビイングで使用した資料・文書・メールと、法務省が2026年に自民党の法務部会や司法制度調査会で示した資料・文書の全て(電磁的記録も含む)
すると、法務省は5月13日付の文書で「作成又は取得しておらず、保有していない」として不開示を決定した。
再審制度の見直しの経緯と開示請求に対する法務省の対応状況(弁護士ドットコムニュースが作成)
●東京新聞は5月18日に請求→6月17日に「廃棄済みである」
一方、東京新聞が6月26日に配信した記事によると、同紙は自民党内で法案が了承された5日後の5月18日、次のような内容で開示請求したとみられる。
再審制度見直しに関する刑事訴訟法改正案をめぐり、2026年3〜5月に開かれた自民党の法務部会・司法制度調査会合同会議への対応(内部検討に関わる資料も含む)に関する資料の一切
これに対して、法務省は6月17日付で「廃棄済みであり、保有していない」として不開示を通知したという。
●法務省「書き間違えた」と訂正
両社の開示請求の対象は重なる内容だったが、不開示の理由は「作成、取得しておらず、保有していない」と「廃棄済みで、保有していない」と異なっていた。
そこで弁護士ドットコムニュースが法務省に確認したところ、5月の不開示決定について、担当者は「本当は『廃棄済みで保有していない』と書くべきところを間違えた」と説明した。
弁護士ドットコムニュースが開示請求した4月10日は、自民党内の合同会議で政府案への批判が相次ぎ、法案修正に向けた議論が続いていた時期だった。
会議では、法務省刑事局が作成した法案に関する資料が国会議員に配布されており、弁護士ドットコムニュースも実際にその資料を確認している。
また中には、法務省側が恣意的な資料の作り方をしているとして、配布資料の一部とみられる文書をぼかした画像をSNSに投稿する議員もいた。
こうした資料が配布されていた時期に開示請求したにもかかわらず、法務省の説明によれば、それらはすでに廃棄されていたことになる。
さらに、自民党が法案を了承した後の東京新聞の開示請求についても、「廃棄済み」を理由に不開示となっている。
●審議中でも廃棄されていたのか
そうすると、新たな疑問が浮かぶ。
開示請求の時期にかかわらず、「廃棄済み」と説明される運用だったのではないか、という点だ。
法務省(show999 / PIXTA)
平口洋法務大臣は6月26日の閣議後会見で、「保存期間を1年未満とする文書に該当するとの判断のもと、法令に従って廃棄済みであるとの報告を受けています」と説明した。
保存期間が「1年未満」であれば、制度上は短期間で廃棄されることもあり得る。
ただし、法務省の説明どおりであれば、自民党部会で再審制度の見直しが議論されている最中にも、関連する行政文書が次々と廃棄されていた可能性があることになる。
●弁護士ドットコムニュースは審査請求
再審制度は、1948年に刑事訴訟法が制定されて以来、約80年にわたって見直しがおこなわれてこなかった。
その間、袴田巌さんや前川彰司さんの再審無罪や、大川原化工機事件など、違法な捜査や証拠隠しの問題が相次いで明らかになり、ようやく制度改革の機運が高まった。
一方、政府案をめぐっては、冤罪に加担してきた法務省・検察の姿勢に対し、自民党内からも厳しい批判が相次ぎ、部会では怒号が飛ぶ場面もあった。
こうした歴史的な法改正の議論の過程を示す行政文書について、法務省は「すでに廃棄した」と説明しているが、にわかには信じがたい。
弁護士ドットコムニュースは、この不開示決定を不服として、5月19日に審査請求をおこなった。