外国籍を取得したら、自動的に日本国籍を失うとする国籍法11条1項のルールは違憲だとして、スイス在住の男性ら計8人が、国を相手取り、日本国籍を有することの確認などをもとめて東京地裁に提訴した。提訴は3月9日付。原告側代理人によると、国籍法11条をめぐって争う訴訟は今回が初めて。
原告の1人、スイス在住の野川等さん(74)は1969年にスイスにわたり、現在は現地で貿易会社を経営している。スイス国籍がないと、どうしても入札できない仕事があり、2001年にスイス国籍を取得した。2013年末、大使館からパスポートの選択を求められたあと、2015年9月、日本のパスポートが使えなくなった。
野川さんは3月12日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、「私は、両親ともに日本人。ある日、バサッと日本国籍が失くなり、2週間くらい力がでなかった。一方的にアイデンティティを奪われた」「日本が憎いのではなくて、良くするための訴訟だ。国籍法11条が間違っている」と訴えた。
●原告代理人「国と国民、双方にとって利益がある訴訟だ」
原告側代理人によると、野川さんのように国籍喪失で苦しむ国外在住者は少なくないという。会見に同席した仲晃生弁護士は「外国籍を取得することが、日本国籍を離脱する意思ということになっているが、まったく異なる意思だ。(国籍法11条1項は)重国籍の発生防止とされているが、今の社会情勢のもとで、本当に妥当なのか」と疑問を投げかけた。
また、椎名基晴弁護士は「(国籍法11条1項が無効となれば)外国籍の取得について、真剣に悩む国外在住の国民数十万人が、国籍喪失を気にせずに活躍できる。海外の日本人社会を活性化することができる。国と国民、双方にとって利益があるウィンウィン訴訟だ」と今回の訴訟の意義を強調した。
訴状などによると、原告は、野川さんを含めてのスイス在住の6名、リヒテンシュタイン在住の1名、フランス在住の1名。あくまで国籍法11条1項が「外国移住の自由」や「国籍離脱の自由」を定めた憲法22条などに違反することを争い、複数国籍を認めることではないという。