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ウーバー配達員の事故被害者「会社がサポートして」 当事者間の交渉進まず
事故にあった女性(2020年7月21日、東京・霞が関の厚労省記者クラブ、弁護士ドットコム撮影)

ウーバー配達員の事故被害者「会社がサポートして」 当事者間の交渉進まず

フードデリバリー「ウーバーイーツ(Uber Eats)」の配達員でつくる「ウーバーイーツユニオン」は7月21日、都内で会見を開き、配達員の事故に関する調査結果を公表した

会見には、配達員による事故の被害者女性も参加。女性は「事故にあったときのことはあまり覚えていないが、夫がいなければ泣き寝入りしていたと思う。その日その日で体調の変化があり、目の視力の回復が今後心配だ」と話した。

ウーバー側は事故について何ら対応してくれなかったといい、女性の夫は「ウーバーに限らず、サービス業で事故は起きるものであろうと思うが、重要なのはそのあとのサポートだ。被害者がなぜ苦しまなければならないのか」と訴えた。

●事故から1カ月、交渉は何も進まず

女性は6月4日昼、東京都品川区の歩道で、自転車に乗っていた配達員と接触。救急車で病院に搬送され、目に傷を負ったほか、むち打ち症と診断された。その後手術を受け、数日間入院。6カ月の経過観察が必要と言われた。

配達員は外国籍で、日本語がほとんど話せなかった。警察から「ウーバーの方に連絡した方がいいのではないか」と助言され、女性の夫はウーバーイーツのお客様センターに連絡。しかし、新型コロナウイルスの影響で対応しておらず、ネットで探した別の番号に電話してようやく会社に繋がった。

ウーバーイーツの事故担当者からは「保険会社から連絡する」と言われたが、保険会社からは「示談交渉特約がないため、示談交渉ができない」と言われた。その後、配達員に代理人の弁護士がついたが連絡が途絶えたため、今後女性側も代理人をつけて交渉する予定だという。

女性は7月14日、過失傷害の疑いで刑事告訴。警察による配達員への事情聴取も今後予定されているという。

女性の夫は「本来であればサービス提供している会社がサポートするべきだと思う。配達員も事故にあった時、ある意味被害者ではないか。個人事業主という扱いにして、サポートしないウーバーイーツはどうなのか。働いている人を都合よく使っている感じがする」と話した。

●ユニオン、不十分な事故補償を指摘

配達員が事故に巻き込まれるケースもある。

事故調査は、NPO法人「東京労働安全衛生センター」協力のもと、配達員を対象に1月7日〜3月31日にかけてGoogleフォームで実施。32件(配達員29人)の事故被害が報告された。

事故による負傷は、「打撲や擦過傷」が45%ともっとも多く、「頚椎捻挫や靭帯損傷」が20%、「骨折」が19%と続いた。治療のため仕事を休んだ期間について尋ねたところ、もっとも多かったのは「1〜2週間」で42%、2番目は「1ヶ月」で19%だった。

ウーバー側は2019年10月1日から、全ての配達員を対象に事故を起こした場合の補償に加えて、配達員が事故にあった場合の見舞金を補償する個人保険の提供を開始した

ウーバーイーツのHPより(https://www.uber.com/jp/ja/drive/insurance/) ウーバーイーツのHPより(https://www.uber.com/jp/ja/drive/insurance/)

ただ、補償の対象は、配達員が、配達リクエストを受けた時点から配達が完了、またはキャンセルするまでの間に生じた事故とされ、配達員の治療費に関する「医療見舞金」は上限が25万円となっている。

調査を担当したユニオンの土屋俊明さんは「事故はオンラインでの待機中や注文が受けられる場所に移動中にも起きている。こうした場合、業務に従事している時間にも関わらず、事故が起こっても補償されないのか」と指摘。医療見舞金についても「25万円では足りない」という声が出たという。

今回の事故調査を受け、ユニオンはウーバー側に、配達員に事故対応を丸投げせず、配達員との事故にあった被害者からの問い合わせ窓口を設置すること、対人・対物賠償保険について示談交渉特約を追加することなどを求めた。

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