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「松本走り」「伊予の早曲がり」…「名古屋走り」だけじゃない 酷すぎるご当地迷惑運転
松本市の「広報まつもと2019年3月号」より(https://www.city.matsumoto.nagano.jp/shisei/koho/koho/h31/kouhou3gatsu.files/matumotobasiri.pdf)

「松本走り」「伊予の早曲がり」…「名古屋走り」だけじゃない 酷すぎるご当地迷惑運転

2018年まで、16年連続で交通事故の年間死者数が全国ワースト1位だった愛知県。今年はそんな愛知県内の危険走行として、「名古屋走り」が話題になりました。

「名古屋走り」とは、車の運転中、ウィンカー(方向指示器)を出さずに進路変更するというものです。以前から危険だと指摘されてきましたが、今年10月には、名古屋走りをして事故を起こした会社役員の50代男性が自動車運転処罰法違反(過失致傷)の罪で起訴されています。

実は、「名古屋走り」以外にも、全国各地で交通マナーやルールが問われる危険な運転があります。「松本走り」や「伊予の早曲がり」などと呼ばれるものです。

今年5月、強引な右折によって園児ら16人が死傷した滋賀県大津市の事故が社会問題化したこともあり、こうしたご当地ルールの危険な運転に厳しい目が向けられています。

●強引な右折「松本走り」で発生した事故は昨年78件に

数年前、東京から長野県松本市に仕事で訪れていた会社員、M美さんは、現地で車を運転して驚いたことがありました。

「交差点でこちらが直進しようとしているにも関わらず、右折車が突然、曲がってくることが何度もありました。交通事故になるんじゃないかとヒヤヒヤしました。こんなことは初めてです」

これは、「松本走り」あるいは「松本ルール」と呼ばれる運転。松本市は今年、広報誌「広報まつもと」2019年3号で「松本走り」を特集し、その特徴として「対向車がいるのに強引に右折」「左折車にかぶせるように右折」「青信号と同時に、内回りに右折」「前が詰まっていても交差点に進入」「ウィンカーを出さずに進路変更」を挙げています。

なぜ行われるようになったのかは諸説ありますが、M美さんが地元の人に聞いたところ、「松本は城下町で道が狭いし、右折レーンも少ない。右折がなかなかできないので、ついつい強引に曲がってしまう」と話していたそうです。

松本市によると、2018年に「松本走り」による市内の事故は78件発生。お互い思いやりを持って運転するよう、呼びかけています。

●大津の園児ら死傷事故きっかけに「危険な右折」撲滅へ

危険な右折は「松本走り」だけではありません。愛媛県の「伊予の早曲がり」、茨城県の「茨城ダッシュ」、山梨県の「山梨ルール」など、同様の運転が各地で行われています。今、こうした「ご当地ルール」に厳しい目が向けられています。

きっかけは今年5月、大津市内の交差点で、右折車と直進車が衝突、園児ら16人巻き添えになって死傷した事故でした。

この事故では、右折していた50代女性の被告が、過失運転致死傷罪に問われ、禁錮5年6カ月が求刑されています。報道などによると、検察側は「対向車を確認せず、漫然と右折する無謀な運転だった」と指摘したそうです。

この事故が発生した当時、「松本走り」による事故が多発している松本市の菅谷昭市長は、あらためてやめるよう市民に呼びかけ、「ルールを守って運転を」と要望しました。

危険な右折は「交差点優先車妨害」違反として、反則点数や反則金6000円(普通車)となるばかりか、大津市の事故のように人命にも関わる大惨事につながる可能性もあります。各地の自治体では、大津市の事故をきっかけに、交差点の安全を見直し、右折レーンの設置や信号機で右折専用の青信号を出すといったインフラ整備の取り組みも行われています。

しかし、ネットでは現在も、「名古屋走り」や「松本走り」であわや事故に遭いそうになった人たちが、「危ない」「やめてほしい」と訴える投稿が絶えません。まずは一人ひとりの運転マナーが問われています。

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