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「残った給食持ち帰り」で教師処分の堺市 食中毒で児童死亡の過去、毎年追悼も
写真はイメージです(msv / PIXTA)

「残った給食持ち帰り」で教師処分の堺市 食中毒で児童死亡の過去、毎年追悼も

堺市教育委員会は12月25日、廃棄予定だった学校給食を持ち帰っていた市立高校の60代教諭を減給処分にしたと報じられている。

報道などによると、教師は「もったいないと思った」などの理由から、4年にわたり、パン約1000個と牛乳約4200本を持ち帰っていたという。教師は持ち帰った給食は家族で食べていたといい、実費約31万円を弁済した上、退職したという。

このニュースに対し、「廃棄予定だったものを持ち帰ることがなぜ悪いのか」という同情の声が集まった。たとえば、お笑いコンビ、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんも12月26日、ツイッターで次のように疑問を呈した。

「余った給食を持って帰った高校教諭が減給処分だって…悪い事なのかな?食品ロスが問題になってる昨今…教えるべき事はどうやってロスを無くすかじゃないんですかね?この判断をしてしまった人達の食品ロスに対する意見を聞いてみたい」

一体、なぜ教師は処分されたのだろうか。堺市教委に取材した。

●堺市の子どもたちを襲った未曾有の食中毒事件

かつて、学校の給食を児童や生徒が食べ残すと家庭に持ち帰ることは全国でよくある光景であり、問題視されていなかった。

しかし、1996年7月、堺市で学校給食が原因となり、病原性大腸菌O157による集団食中毒が発生。児童7892人を含む9523人が罹患し、うち児童3人が死亡するという事件が起きる。児童の1人は後遺症によって、9年後に亡くなった。

これを受け、堺市では事件を風化させないことを目的とし、多くの子どもたちが食中毒症状を発症した7月12日を「O157 堺市学童集団下痢症を忘れない日」として、例年「追悼と誓いのつどい」を開催している。

●文科省「学校給食衛生管理の基準」は「持ち帰り禁止が望ましい」

これ以後、文科省は給食の衛生管理の徹底を目的として、1997年度に「学校給食衛生管理の基準」を設置した。現在、給食の残飯については「児童生徒に対して、パン等の残食の持ち帰りは、衛生上の見地から禁止することが望ましい」「パン、牛乳、おかず等の残品は、全てその日のうちに処分し、翌日に繰り越して使用しないこと」と決められている。

一方でやはり、食べ残しが少なくないことから、現場では「一律禁止」としている学校が多い中、福岡市では2012年からパンについては全小学校で持ち帰り可能としている。

●堺市教育委員会の「処分理由」は?

弁護士ドットコムニュースでは堺市教委に対し、今回なぜ教師が処分されたのか取材した。堺市教委では、処分の根拠として「地方公務員法第32条と第33条に違反したため」とする。

第32条では「法令等及び上司の職務上の命令に従う義務」、第33条では「信用失墜行為の禁止」がそれぞれ定められている。教師は、衛生上の問題というよりも、地方公務員法に触れたということだった。

堺市教委では、「確かに給食は高校に限らず、小学校や中学校でも持ち帰ってはいけないことになっていますが、今回の場合は給食はそもそも生徒に提供されるべきものであり、教師のためのものではありませんでした」と説明している。

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