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「差別なくすための一歩に」元受験生の女性が涙の訴え、東京医大不正入試で初弁論
第1回口頭弁論の後に司法記者クラブで会見する原告側弁護団(左から2人目が角田由紀子弁護士)(2019年6月7日、弁護士ドットコムニュース撮影)

「差別なくすための一歩に」元受験生の女性が涙の訴え、東京医大不正入試で初弁論

東京医大の不正入試問題で、性別を理由に不利な取り扱いをされたとして、不合格だった元受験生の女性36人が受験料の返還や慰謝料を求めている裁判の第1回口頭弁論が6月7日、東京地裁で開かれた(谷口安志裁判長)。東京医大側は争う姿勢を示した。

この日は、原告の1人で、東京医大を3回受験したが不合格だったという20代女性が意見陳述を行った。女性は幼い頃から医師になる夢を持ち、現在も受験勉強を続けているという。陳述では、涙で言葉をつまらせながら、「性別を理由としたあからさまな得点操作を行なっていたことを知り、愕然としました」と語った。

原告の代理人である「医学部入試における女性差別対策弁護団」によると、順天堂大学に対しても6月20日、女性十数人を原告とした同様の提訴を予定しているという。

●東京医大側は欠席、原告の女性は「落胆しました」

この日の意見陳述では、原告の20代女性が涙で声を震わせながら、医師になりたいという夢を語った。しかし、3回も受験した東京医大の入試で不利な取り扱いを受けたことに対し、「なぜ人の人生を性別で品定めして、足切りみたいないことをするのでしょうか。今回の問題は各大学を仕切る上の人たちに、男尊女卑的な古い考えを持っている人が残っていたから起きたのだと感じています」と大学側への憤りをあらわにした。

また、女性は、「少しでも黙ってしまったら忘れられ、女子に不利なままになってしまうかもしれないと思ったので、提訴に参加しました。この訴訟が、医学部の問題に限らず日本から差別をなくすための一歩になることを期待しています」と語った。

しかし、法廷には被告である東京医大側は現れなかった(第1回口頭弁論では、あらかじめ書面を出しておけば被告側は欠席できる擬制陳述という仕組みがある)。陳述後の記者会見で、女性は「東京医大はこれまで行なってきた差別に対して、認識が甘いのかなと思いました。上げられた声さえ、聞きに来てくれないのかと落胆しました」と話した。

●「女性差別を日常的に見てきた人でも愕然とした」

口頭弁論では、弁護団共同代表の角田由紀子弁護士も意見陳述を行なった。角田弁護士は、「女性であるというだけで女性がさまざまなに不利益を受けることは、男女の賃金差別などに残念ながら日常的にみられます。しかし、女性差別を日常的に見てきた人々であっても、こともあろうに大学入試で、女性の合格者を少なくするという明確な目的の下、何年にもわたり行われてていたことに衝撃を受けました」と語り、次のように述べた。

「憲法学者・辻村みよ子教授の言葉を借りれば『永久凍土』というべき女性差別の厚い層が牢固として横たわっていたのです。憲法施行後、71年を経過しているにもかかわらず、この『永久凍土』は、1ミリも溶けていなかった事実に、原告をはじめ、人々は愕然とさせられました」

また、憲法13条、憲法14条で個人の尊重や性差別の禁止を定めていることや、女性に男性と同一の教育を受ける権利が保障されるべきことを定めた国連の「女性差別撤廃条約」に日本が批准していることを指摘。「東京医大が行なったことは、一言の弁明も許されない不法なことであります」と批判した。

なお、弁護団では東京・青山で6月22日、専門家を招いたシンポジウム「ジェンダー平等こそ私たちの未来〜医学部入試差別から考える〜」を開催する。弁護団では当初、クラウドファンディングで弁護団の活動費用の支援を募り、最終的には目標額を大きく上回る740万円が集まった。多くの支援に対するレスポンスとして、このシンポジウムを企画したという。

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