プロ野球セ・リーグで12年ぶりにBクラスに転落した中日ドラゴンズの「厳冬更改」が止まらない。吉見選手や荒木選手などの中心選手からドラフト1位ルーキーの福谷選手ら若手まで、幅広い選手が契約更改で、大幅な年俸ダウンを球団から提示されている。
なかでも、球団の顔として長年チームを支えた井端選手が88%ダウンを提示され、結局、退団を選んだというニュースは、野球ファンに大きな衝撃を与えた。この88%減というのは、野球協約の定める「減額制限」を大きく上回っている。野球協約では、年俸1億円超なら40%、それ以下なら25%までと規定されているからだ。
同様に、本来ならば25%減までのはずの朝倉選手も60%減で契約更改したと報じられている。勝負の世界だけに、結果が伴わなければ大幅減も仕方ないのだろうが、守られないルールでは、何のためにあるのか分からない。「減額制限」を超える契約更改は、野球協約に違反しないのだろうか。大久保誠弁護士に聞いた。
●減額制限は「選手の同意」があれば無視できる
「減額制限を定めているのは、野球協約の第92条ですが、規定では『選手の同意があればこの限りではない』となっています。つまり『選手の同意があれば』、減額制限を大幅に超える契約更改をしても違反にはなりません」
このように大久保弁護士は説明する。しかし、減額されるような場面では、選手側が強く出られるとも思えない。合意のうえといっても、結局は球団の「何でもアリ」になってしまうのではないだろうか?
●選手には「調停」を申し立てる道もある
「野球協約の第94条では、選手や球団が次年度の報酬を巡って合意に達しない場合、コミッショナーに対し『調停を求める申請書を提出することができる』と規定されています。
同意を拒む選手としては、調停を申し立てればよいのです。調停の場合であれば、減額制限を超えることはできません。調停も申し立てず、同意もしないのであれば、自由契約となるしかありません」
選手としては、同意や直接交渉以外に、調停という道も残されているわけだ。そうすると、当然ではあるが、最終的には選手個人の決断にかかってくる部分が大きいのだろう。
大久保弁護士は「主力として長年チームに貢献してきた選手の場合、調停までしてチームに残るのは自負心を損なう、という側面もあるのではないでしょうか」と話していた。