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「30年間待ち望んできた」第二次夫婦別姓訴訟、事実婚を選ばざるをえなかった原告の訴え
今年5月、提訴の会見を行った第二次夫婦別姓訴訟弁護団(東京・霞が関の司法記者クラブ)

「30年間待ち望んできた」第二次夫婦別姓訴訟、事実婚を選ばざるをえなかった原告の訴え

夫婦別姓の婚姻届が受理されず、法律婚ができないのは違憲だとして、国を相手に損害賠償を求めた第二次夫婦別姓訴訟の第一回口頭弁論が7月18日、東京地裁(吉村真幸裁判長)で開かれた。

この訴訟は2015年に最高裁まで争った夫婦別姓訴訟判決を受け、新たな争点で提訴されたもの。今年5月、夫婦同姓を義務付けた民法750条は、同姓を希望する者と別姓を希望する者を差別し、結婚の可否を生じさせているなどとして、世田谷区在住の事実婚夫婦が提訴。この他、東京地裁立川支部、広島地裁でも同時に提訴、現在原告は8人となった。

これらの訴訟で初となった東京地裁での口頭弁論では、夫婦別姓訴訟弁護団(代表・榊原富士子弁護士)の野口敏彦弁護士が訴訟の趣旨をあらためて訴えた一方、国側は全面的に争う姿勢を示した。

●いまだ96%の女性が結婚で改姓…「実質的な平等保たれていない」

「原告両名は約30年間夫婦として婚姻生活を営んできました。原告両名はいずれも研究者であり、生来の氏で論文を公表してきた実績があったため、婚姻改姓はいずれにとってもその実績を断絶されるものでした。それを回避するためには事実婚という方法を取らざるを得ず、以来、原告両名は選択的夫婦別姓制度の実現を待ち望んできました」

訴訟の趣旨を訴える代理人弁論で、弁護団の野口弁護士はそう語り始めた。弁論によると、現在の民法や戸籍法が夫婦別姓の選択肢を認めていないことは、憲法14条1項、憲法24条及び国際人権条約に違反するとしている。主な訴えは次の通り。

【憲法14条1項違反】

夫婦別姓を希望する者は、法律婚をすることが認められてない。そのため、法律婚夫婦に与えられる法定相続権、共同親権、配偶者控除など税法上の特典などを教授することができない。夫婦同姓を望むか、別姓を望むかは、個人の生き方に関するものであり、「信条」によって差別的取り扱いをすることは、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する。

【憲法24条違反】

2016年には約96%の夫婦において、妻が改姓しており、夫婦間の「実質的な平等」は保たれていない。これは、憲法24条に定めた「婚姻の自由」に違反する。

【国際人権条約違反】

日本は自由権規約と女性差別撤廃条約に批准しており、憲法98条2項によって、日本はこれらの条約を遵守する義務がある。しかし、日本はこれまでに3回、女性差別撤廃委員会から民法750条の改正を勧告されている。2016年に行われた3度目の勧告では、「2015年12月に最高裁は夫婦同姓を求めている民法750条を合憲と判断したが、この規定は実際には多く場合、女性に夫の姓を選択せざるを得なくしている」として、「女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の姓の選択に関する法規定を改正すること」を求めている。

これらの訴えに対し、国側は棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。次回口頭弁論は10月1日に行われる。

●活発化する夫婦別姓訴訟

現在、夫婦別姓訴訟は大きく3つのグループが提訴している。この日開かれた第二次夫婦別姓訴訟のほか、今年1月にソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏ら4人が戸籍法上の問題を指摘して、東京地裁に提訴。また、6月にも、アメリカで法律婚をしたにもかかわらず、日本の戸籍に婚姻が記載されないのは立法に不備があるとして、映画監督の想田和弘さんと舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子さん夫妻が婚姻関係の確認などを求めて東京地裁に提訴している。

(弁護士ドットコムニュース)

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