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「自家用車タクシー」解禁へ・・・「ライドシェア」の普及に向けた課題とは?
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「自家用車タクシー」解禁へ・・・「ライドシェア」の普及に向けた課題とは?

一般のドライバーが有償で「客」を乗せる「自家用車タクシー」が解禁される見込みだ。政府の国家戦略特区諮問会議で、安倍首相が10月20日、解禁に向けた検討を指示した。

自家用車タクシーは米国などでは認められているが、日本では無許可で営業する「白タク」とみなされ、法律で禁止されている。特区諮問会議は今年度中に、「特区内での限定解禁」か、法改正や省令改正による「全国的な解禁」かの結論を出す予定だ。

この自家用車タクシーは「ライドシェア」ともよばれ、海外ではスマートフォンを使った米国発の配車サービス「Uber」(ウーバー)が人気を博している。しかし今年2月、ウーバーテクノロジーズ社が、福岡市内で「ライドシェア」の検証実験を始めたところ、国土交通省が道路運送法違反の恐れがあるとして、中止するよう指導していた。

自家用車タクシーが解禁された場合、懸念はないのだろうか。そして、解禁された場合、Uberなどのライドシェアビジネスだけでなく、従来からあった「白タク」も認められることになるのか。籔内俊輔弁護士に見解を聞いた。

●「自家用車タクシー」普及の懸念とは?

「『自家用車タクシー』が解禁されると、運転技術が未熟な運転者が交通事故を起こして乗客が負傷する等、運転者と乗客のトラブルも予想されます。

そこで、運転者への講習等の安全確保の対策を行うべきとの指摘があります。また、日本国内での普及を促進するためには、『自家用車タクシー』の運転者と乗客を結びつけるプラットホームを展開する事業も必要です。

そのプラットホームで、運転者の運転技術や過去の乗客による評価が正確に開示され、また、過去の運転者による乗客に関する評価等も正確に開示され、それらがスマートフォンで簡単にみられるようになる等、サービス自体の信頼性や利便性を確保する事業者の活動も重要でしょう」

今回の動きにより、白タクも今後、解禁されることになるのだろうか。

「国家戦略特区諮問会議では、観光客の誘致を目的として、過疎地等での交通手段に『自家用車タクシー』が利用できるよう、現状の法規制下よりも柔軟な運用をするための検討が指示されたようです。

解禁される地域は過疎地に限定することを想定しているようであり、都市部を含めて全国的に『白タク』が解禁される可能性は、かなり低いと思われます」

なぜ「白タク」の解禁は難しいのだろうか。

「上記の安全性等の問題のほか、都市部においては、タクシーの供給が過剰となり、タクシードライバーの労働条件が悪化していると指摘されています。現在、道路運送法に基づいて、タクシー台数の削減や運賃の規制などを強化する対策が実施されている状況です。

全国的な解禁に向けた動きとなれば、タクシー事業者を中心に強い反対意見が出るものと思われます」

籔内弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

籔内 俊輔
籔内 俊輔(やぶうち しゅんすけ)弁護士 弁護士法人北浜法律事務所東京事務所
2001年神戸大学法学部卒業。02年神戸大学大学院法学政治学研究科前期課程修了。03年弁護士登録。06〜09年公正取引委員会事務総局審査局勤務(独禁法・景表法違反事件等の審査・審判対応業務を担当)。12年弁護士法人北浜法律事務所東京事務所パートナー就任。16〜20年神戸大学大学院法学研究科法曹実務教授。

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