電車を降りようとする人にぶつかり、スマホがこわれてしまった――。そんな体験をした女性から、「相手に修理代を請求したい」という相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
ラッシュ時の通勤電車。相談者は扉近くに立っており、電車が駅に停車するたび、他の乗客の邪魔にならないように乗り降りしていたという。あるとき、右手に持っていたスマホが、降車した男性にぶつかり、ホームと電車の隙間から線路に落ちて、液晶画面が割れてしまった。相手に「修理代金を請求したい」と告げたが、男性は「混雑している電車付近でスマホを持っていたあなたにも非がある」と応じなかったそうだ。
他人とぶつかって自分のスマホが壊れてしまったら、どのように相手と交渉すればいいのか。修理代は払ってもらえるのか。「歩きスマホ」をしていた場合も、弁償を求めることは可能なのだろうか。池田誠弁護士に聞いた。
●本人に過失があれば、減額される可能性も
「混雑している車内であっても、道を歩いていても、理屈は全て同じです。相手に過失があれば、不法行為に該当して損害を賠償してもらう余地があります」
池田弁護士はこのように述べる。
「混雑した電車内から降車するような場合でも、できる限り他の乗客にぶつからないよう避けて通るか、少なくとも、スマホを落とすほど強くぶつからないよう気をつけるべきといえるでしょう。
相手が、そうした注意をせずに相談者とぶつかったのなら、過失が認められ、修理代を払ってもらう余地があります。
ただ、注意しなければいけないのは、相談者がぶつかった人の過失を証明できるかという点と、相談者自身に過失が認められて、弁償を求めることができる額が減額(過失相殺)される可能性があるという点です。
裁判を想定していないのであれば、厳密な意味での『証明』は必要ないとしても、できるだけ詳細に状況を説明する必要があります」
●詳細な状況を記録しておくべき
具体的には、どんなポイントを押さえておけばいいだろうか。
「たとえば、接触したときのお互いの位置関係や、相手が後ろから押されるような状況で降車しようとしていたのかどうか、などです。
また、仮に相手に過失が認められても、ラッシュ時で人が激しく昇降する場では多少の接触もやむを得ません。そのような場で、相談者が手にスマホを持っていたこと自体に過失が認められ、修理代が減額される余地があります。
今後の進め方ですが、まずはできるだけ詳細に状況を書き、修理代も明記し、書面で請求されることをお勧めします。
その際の請求額は、過失相殺を考慮しない修理代全額がよろしいと思います」
池田弁護士はこのように述べていた。