東京都港区の対応が不適切だったために「いじめ被害」が深刻化し、精神的苦痛を負ったなどとして、区立の幼稚園に通っていた女児とその母親が、区を相手取り計約370万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。訴状は3月19日付で受理されている。
●転園先に「加害児」が再び転入、被害が深刻化
訴状によると、女児は以前通っていた区内の認可保育園で、同じクラスだった特定の児童から仲間外れなどのいじめを受けていたとされる。
環境を変えるため、2024年7月に現在の区立幼稚園へ転園したが、同年12月、その児童も同じ幼稚園に転入。 初日から執拗な追い回しが始まったという。
幼稚園側は転入前、原告側の不安に対して「保育園と違って人数が多いから大丈夫だろう」などと説明していたとされる。
女児はその後、夜尿や物が二重に見える症状など、心身の不調を訴えるようになり、2025年2月から登園できなくなった。
●母親は「うつ病」、女児は「PTSD」と診断
女児の保護者は同年4月、親は港区に対して「いじめ重大事態」の申し立てをおこない、5月に区教育委員会から、いじめ重大事態に準ずる調査を開始するとの連絡を受けた。
さらに同年6月には、看病にあたっていた母親にうつ病と診断され、女児も同月、PTSDと診断されたという。
港区は同年9月、経緯に関する報告書を公表。女児が「心理的に心を痛めた」と確認した一方、「いじめの有無」については結論を示さなかった。
訴状によると、この報告書が公表されてSNS上で話題になると、加害側児童の保護者が退園を申し出て、その後、女児は登園可能な状態になったという。
●「安全配慮義務違反」原告側が4つの過失を主張
原告側は、港区および教育委員会が園児の安全を守るべき「安全配慮義務」を怠ったと主張している。
具体的には次の4点を過失として指摘し、これらの対応の不備が、女児の病状の深刻化や登園できない期間の長期化を招いたと訴えている。
(1)転園の安易な許可
保育園での被害を把握できたにもかかわらず、十分な調査や調整なしに、加害児童の同じ幼稚園への転園を許可した点。
(2)相談窓口の不備
いじめ重大事態の申し立てに関する書式や窓口が整備されておらず、初動対応が遅れた点。
(3)人員配置の不足
幼稚園のクラスに専属の担任がおらず、学年主任が兼務するなど、適切な見守り体制がなかった点。
(4)関係部署の連携不足
区の「こども家庭支援センター」に通報があったにもかかわらず、教育委員会との適切な情報共有がおこなわれなかった点。
●港区「コメントは差し控える」
港区は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「本件につきましては、現在係争中であることから、コメントは差し控えさせていただきます。なお、訴状の内容を精査した上で、区として適切に対応してまいります」と回答した。