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下着盗んだ大学生「見られたかも」と出頭、これは自首になる?“2枚か3枚か”で量刑に差は?
写真はイメージです(keikyoto / PIXTA)

下着盗んだ大学生「見られたかも」と出頭、これは自首になる?“2枚か3枚か”で量刑に差は?

札幌市内の集合住宅で20代女性の部屋に侵入し、下着を盗んだとして、男子大学生が住居侵入と窃盗の疑いで逮捕されました。

北海道ニュースHUB(2月17日)によると、大学生は2月16日早朝、札幌市北区にある5階建て集合住宅の無施錠の部屋に忍び込み、女性の下着3枚を盗んだ疑いが持たれています。

大学生は犯行当日に「見られたかもしれない」と自ら警察署に出頭したものの、盗んだ枚数については「2枚しか盗んでいない。3枚は間違いです」などと、容疑を一部否認しているとのことです。

今回のように、窃盗の事実は認めつつも「数量」について争いがある場合、その後の刑事手続きや量刑にどのような影響があるのでしょうか。

●「見られたかもしれない」での出頭は「自首」にあたる?

「自首」にあたる場合、刑が軽くなる可能性があります(刑法42条)。

「捕まると思ったから出頭した」という場合でも、自首と認められるのか、という疑問を持つ方もいるでしょう。

自首とは、捜査機関に、犯罪と犯人が発覚する前に、自ら進んで自分の犯罪事実を申告し、その処分を求める意思表示をすることをいいます。犯罪事実がすでに発覚している場合でも、その犯人が誰であるかが発覚していない場合には、自首が成立する可能性があるとされています。

ただし、犯人が誰であるか、という判断には、氏名が明らかになっている必要まではありません。姿や体格などの特徴で捜査機関から犯人が特定されているような場合には、自首は成立しないと考えられています。

今回のケースでは、犯行当日に本人が警察署へ出頭しています。仮に動機が「被害者に見られたかもしれないから」という不安によるものだったとしても、犯人が特定されていない段階で申告していれば、自首として扱われ、刑が減軽される可能性があります。

●盗んだ枚数が「2枚か3枚か」の争いは量刑に影響する?

報道によると、大学生は「2枚しか盗んでいない」と主張しています。このような枚数の争いは、判決や量刑にどの程度影響するのでしょうか。

一般論として、窃盗事件では被害の程度は量刑上大きく考慮されます。ただし、下着が2枚か3枚かという違いで、事実上、刑が大きく変わるわけではありません。

過去の刑事裁判における量刑の傾向を分析した『量刑調査報告集』(第一東京弁護士会 刑事弁護委員会)には、たとえば次のような事例があります。

・ベランダに干してあった下着1枚(時価約300円相当)を盗んだ事案で、「懲役1年、執行猶予3年」(同Ⅲ、p60のNo.20)

・ベランダに干してあった女児用の下着2枚(時価合計約600円相当)を盗んだ事案で、「懲役10カ月、執行猶予3年」(同Ⅳ、p56のNo.1)

いずれもベランダの下着を盗んだという点で共通しており、被害品の数量や金額が多少違うくらいだと、現実にはさほど量刑には影響ないように思えます。

ただし、裁判では盗んだ物の内容や数量は丁寧に認定されます。「盗んだことには変わりないからどちらでも同じ」とはなりません。

検察官も起訴にあたって被害品を特定し、裁判所も事実を正確に認定します。

●一部否認すると罪は重くなるの?

仮に裁判で「3枚」盗んだと認定された場合、一部を否認したことは不利に働くのでしょうか。

否認した事実が裁判で認められなかった場合、実務上「反省もせずに不合理な弁解に終始している」などとして不利に評価されることはあり得ます。

とはいえ、今回のケースでは、結果的に容疑者の主張が認められずに、被害が「3枚」と認定されたような場合でも、事実上は量刑に大きな差はないと考えられます。

というのも、今回の事件では、容疑者は窃盗そのものは認めて自ら出頭しているわけですし、その中で被疑事実である「3枚」の窃盗のうち、2枚については認め、1枚についてのみ争っているわけです。

仮に被告人の主張が認められなかった場合でも、裁判所がこの1枚について争ったことを重く評価するとは考えにくいです。

そもそも刑事手続きは、刑罰という不利益を受ける被告人に、十分な主張や立証の機会を与えることが前提とされています。今回のような事例で、被害品の1枚について争ったことをもって「反省がない」などと重く評価するのは、刑事手続きの適正という観点から大いに問題があると考えます。

なお、自ら警察に出頭しながら、「1枚」についてのみ争っているということからすると、容疑者の主張が真実である可能性は十分あると思われますから、弁護人もこの点についてきちんと事情を確認しているものと思われます。

●19歳の「特定少年」、今後どのような処分が想定される?

今回の容疑者は19歳と報じられています。

少年法では20歳未満は「少年」とされ、少年法の対象となります(少年法2条)。18歳以上20歳未満の少年は「特定少年」と呼ばれ、成人に近い扱いをしつつも、原則として少年法の手続きが適用されます。

通常は、逮捕・勾留の後、事件は家庭裁判所に「送致」され、家庭裁判所で審判を受ける流れとなります。家庭裁判所は、調査の結果、保護処分(保護観察、少年院送致など)に付するか、刑事処分が相当と判断すれば検察官に送致するかなどを決定します(少年法20条、62条など)。

また、家庭裁判所の審判前に本人が20歳になった場合には、事件は検察官に送致され、成人の刑事事件として扱われます(少年法19条2項、23条3項)。

したがって、19歳で逮捕された場合、手続きの進行状況によっては、成人として刑事裁判を受ける可能性があります。

(参考文献)植村立郎編集『刑事事実認定重要判決50選〔第3版〕上巻』(立花書房,2020)

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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