若者たちが自殺の危機に直面する中で、さらなる取り組みを考えていく必要がある──。
10月24日に公表された令和7年版「自殺対策白書」は、15〜29歳の自殺者数が依然として3000人を超える水準で高止まりしている状況を受け、そう警鐘を鳴らした。
2024年の自殺者総数は2万320人で、前年から1500人以上減った。一方、小中高生の自殺者数は529人にのぼり、統計開始以来「過去最多」となった。
●自殺者総数は2万320人、統計開始以来「2番目に少ない」
自殺対策白書は、自殺対策基本法に基づいて、政府が毎年国会に提出している年次報告書だ。
最新の白書によると、2024年の自殺者総数は2万320人。前年(2万1837人)から1517人減少し、統計を取り始めた1978年以降で2番目に少ない水準となった。
男女別では、男性が1万3379人(前年比941人減)で3年ぶりに減少。女性も6941人(前年比576人減)で2年連続の減少となった。
職業別に見ると、「有職者」「無職者」ともに減少傾向を示している。
自殺者数の推移(「令和7年版自殺対策白書」より)
●小中高生は過去最多、「学校問題」が増加
全体の自殺者数が減る一方で、白書は「依然として年間自殺者数は2万人を超えており、近年ではこどもの自殺者数が増加するなど深刻な状況にある」と強い懸念を示した。
なかでも深刻なのが小中高生だ。2024年の自殺者数は529人(前年513人)で、統計のある1980年以降で最多を更新した。
職業別分類でも「学生・生徒等」は増加。原因・動機別(遺書などから判明した分)では、「学校問題」が増加したが、他の主要な動機(「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」「勤務問題」など)が減少しており、対照的な結果となった。
●特集で「若者の自殺」を分析、オーバードーズ問題にも言及
今回の白書は特集として「若者の自殺をめぐる状況」を分析した。若年層では、自殺の背景や自殺手段として、「服毒(医薬品)」の割合が他の年齢層に比べて高いことなどを指摘した。市販薬の過剰摂取、いわゆるオーバードーズの問題が背景にあるとみられる。
また、白書は「現在の10~20代前半の若者たちは、多感な時期に新型コロナウイルス感染症の影響下における家庭環境や学校環境の変化を経験した」とも述べ、「こども・若者が誰一人取り残されず、社会の中に安心できる多くの居場所を持ちながら成長・活躍していけるような社会の実現が求められている」と結んでいる。